迫る大量リストラ、理研研究者が募らせる危機感 日本の科学技術力に影を落とす可能性も

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まず、マッチングの問題がある。A氏が受けた上記の不採用通知の文言は、社交辞令とは言い切れない。むしろ多くの大学が無味乾燥な定型文の不採用通知を返してくる中でひときわ目を引く中身は、誠実に本当の理由を記している可能性がある。

理化学研究所は、日本唯一の自然科学の総合研究所だ。そこで長期間にわたり有期雇用で働く研究者の高度で最先端の研究内容は、大学で行われている研究との互換性が低い。大学の求人は研究分野を特化したものがほとんどで、理研の研究者がそこにマッチした応募をすること自体がそもそも難しい。

また、大学のパーマネント職と呼ばれる無期雇用の教授などのポストは、競争が激しい。財務省は2004年度の国立大学法人化を機に、研究の中枢を担う国立大学で人件費に充てられる運営費交付金を、2015年度までほぼ毎年1%ずつカットしてきた。これを受け、各校はポストを大幅に減らしている。その限られた席に、まだパーマネント職に就けていない准教授などから応募が殺到する。

教授職のポストは研究と教育の2つを求められる場合が多い。長年、理研にいる研究者らは、学生を教育する機会から離れており、教職歴のキャリア面では選考で不利になってしまう。

継続雇用への望み捨てきれず

別の研究者B氏(50代男性)は、2023年3月31日の雇い止めを前にして、未だ転職活動を始めていない。理研で2023年4月1日以降も働けるポストの公募がこれから出ることに希望を託して待っているからだ。

理研は2013年4月1日を起算日として、2023年3月31日で有期雇用が通算10年になる研究者を雇い止めする。2013年4月1日に施行された改正労働契約法では、研究者は同日を起算日にして有期雇用が通算10年を超えれば、無期雇用転換申込権を得られると定める。理研の雇い止めはこれに対応した無期雇用転換の回避策として違法になる恐れがある。

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