しかし、イタンジで感じていた「エンジニアとして成長しないと」という焦りは、少しずつ薄れていった。以前よりも大きな組織で、自分がより能力を発揮できる部分を知ることができたからだ。
「メルカリで身についたのは、プロジェクトマネジメントの能力でした。組織が大きければ大きいほど“調整力”って重宝されるようになるんです。セールス、エンジニア、デザイン、それぞれの業務に対するプロが集まっていたので、部署間をまとめるのが大変でした。個性が強いメンバーなので、辛辣なことを言われたりするときもありますし(笑)。でも、怒られたり文句を言われたりするからこそ、あえてこの辺の力を磨いていく人が少ないような気もしていて。今もすごく役立っている力です」
調整役と言うと、一見、スキルとしてはわかりづらいかもしれない。しかし、当たり前だがプロジェクトや個性的で主張の強い社員をまとめるのは、いつだって調整役なのだ。
イタンジの同僚に声をかけられる
その後、永嶋さんは2018年11月にイタンジに再び入社することになる。
「イタンジにいる同僚の2人からFacebookのメッセンジャーで連絡がきて、『飲みに行こう』と言われたんです。田町の少し古い居酒屋で会って、『戻ってこないか?』と言われて、悩むことなく戻ることを決めました。黎明期を一緒に駆け抜けた、戦友たちの言葉は大きかったですね。
周囲からは『一回辞めているわけだし、会社の将来性は大丈夫?』『今の会社にいたほうがいいんじゃないの?』と心配されましたが、当時、イタンジは現在の親会社であるGA technologiesに買収されたタイミングで、会社の体制が大きく変わるタイミングだったこともあり、『やってみるか!』という気持ちになれたんです」
そして、役員として再入社。当時の社員数は約20人。2022年7月末時点では約170人まで成長しているが、それでもベンチャーであるのは間違いなく、ゆえに永嶋さんも以前と同じく「何でも屋」に近い状況になった。
【2022年10月6日12時15分追記】初出時、社員数に誤りがあったため、修正しました。
しかし、仕事への向き合い方は大きく変わっていた。
「役員として新規サービスの立ち上げを任されました。カスタマーサクセスも兼任したり、あとは親会社との細かい調整だったり……会社や事業に必要なことはとにかくやる感じですね。とにかく、数値化できないような仕事や細かい調整、名前がつかない雑務をどんどん拾っていく。
正直、周囲が想像している役員像とは違うかもしれません。でも、それが結構、自分には合っていたんだと気づきました。何かを突き詰めるスペシャリストというよりは手広くやっていく。ある意味、器用貧乏なんでしょうね」
こうして、以前はモヤモヤを抱えた自身の「何でも屋」な一面が、周囲を支え、引っ張っていくうえでの武器になることに気付いたのだった。
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