大泉洋退場から3カ月「鎌倉殿」一層盛り上がる訳 不安を乗り越え、三谷幸喜マジックが冴え渡る

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実際、8月28日の第33回は過去最低の世帯視聴率10.2%まで落ちてしまいましたが、前回放送の第36回では12.4%まで上がるなど、頼朝が健在だったころの水準まですぐに回復。「鎌倉殿の13人」は他の大河ドラマと比べても、録画やBSでの視聴が多いことも含め、「中だるみのようなものはなく、その勢いはまったく衰えていない」と言っていいでしょう。

視聴者が当作を支えた最大の立役者として名前をあげるのは、主演の小栗旬さんら俳優ではなく、脚本家の三谷さん。歴史上のビッグネームである源頼朝と、人気者の大泉さんを失ったにもかかわらず視聴者を引きつけているのは、むしろ物語の魅力が増しているからに他なりません。

歴史上の勝者だからこその「怖さ」

頼朝の死後、13人の合議制がはじまりましたが、ここでいきなり三谷マジックが炸裂。翌週に梶原景時(中村獅童)が失脚したほか、三浦義澄(佐藤B作)、安達盛長(野添義弘)が息を引き取り、中原親能(川島潤哉)が出家して去るなど離脱者が続出し、早くも若い源頼家(金子大地)に対する抑止力が弱まってしまいました。

つまり、三谷さんは「『鎌倉殿の13人』とタイトルに掲げながらも、わずか1話あまりでその体制は崩壊する」という意外性を見せたのです。また、これによって頼家の傍若無人な振る舞いが加速したほか、北条VS比企の主導権争いがヒートアップ。このあたりから、阿野全成(新納慎也)、比企能員(佐藤二朗)、仁田忠常(高岸宏行)、源頼家(金子大地)、善児(梶原善)らが次々に悲劇的な形で命を落とすシーンが増え、「怖い大河ドラマ」という印象が増していきました。

なかでも、善児が頼家と戦って傷を負い、弟子のトウ(山本千尋)にトドメを刺されるシーンは三谷マジックの真骨頂。傷を負った理由が、紙に書かれた「一幡」という文字に目を奪われたからであり、善児にとって一幡は「ワシを好いてくれている」と初めて人間らしい感情を見せた相手でした。

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