「呑み鉄」六角精児さんと考える赤字ローカル線 「鉄路はずっとつながっているからいいんです」

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六角さんはこの夏、中国山地を走る芸備線を旅したそうです。芸備線(東城~備後落合)の輸送密度は11人。4月にJR西日本が100円の運賃収入を得るのに2万5416円の経費がかかると発表すると、大変な話題になりました。

六角 結構乗っていたけれど、鉄ちゃんだけだった。途中の駅でばあさんが1人乗ったけど、通学の高校生もいなかった。昼だったからかもしれないけど、あのダイヤを見ると、通学には使われていないかもしれない。芸備線は本当に難易度が高い鉄道のアルプス(首都圏から遠く、本数も少なく、乗車が難しいという意味)で、鉄道ファンとしては価値があります。でも車窓を求める一般の人が行くかというと難しいな。

JR東日本や西日本はこれまで新幹線や都市部の在来線の稼ぎで、ローカル線の赤字を埋めてきました。しかし、コロナで輸送密度が最も高い山手線も112万人(19年度)から72万人(20年度)に大きく落ち込みました。テレワークが定着し、JR東日本は「コロナの前には戻らない」とみています。

六角 鉄路というものはずっとつながっているからいいんです。そのノスタルジーが無用と言われれば、それまでなんだけども。残しておいてほしいというのが個人的な希望です。そうはいかないから、じゃどうすればいいのかと言ったら、少しでもいいところ見つけて国、JR、沿線自治体で話し合ってほしい。そして国はもう少し予算を出す。どうしたって最終的には国が面倒みるしかなくなってきます。国が首を横に振っている限りは窒息死していくしかないんだろうな。

新橋~横浜間の鉄道開業から150年。国鉄の分割民営化から35年。ローカル線もまた大きな節目の年を迎えています。

◆上下分離方式 列車の運行と、線路、駅舎などの管理・維持を切り離し、路線を運営する方式。欧州の鉄道では一般的で、日本でも三陸鉄道など第3セクターで採用されているが、JRでは只見線が初めて。福島県がインフラを持ち、県と沿線自治体は年3億円を負担する。
◆輸送密度 1キロあたり1日の平均利用者数。1980年に施行された国鉄再建法(87年廃止)では、4000人未満は「バス輸送への転換が適当」、2000人未満は「廃線を急ぐ対象」とされた。4000人未満の路線が占める割合はJRが発足した87年度の36%から20年度は57%に増え、2000人未満は16%から39%に増加している。
◆国交省予算と国鉄債務 22年度の道路関係予算は1兆5943億円。鉄道予算は1075億円で15分の1程度。整備新幹線関連が804億円で4分の3を占めている。旧国鉄は37兆円の債務を抱え、利払いだけでも年1兆円に達した。債務残高は19年度末で約16兆円。
◆六角精児(ろっかく・せいじ)1962年6月24日生まれ。酒と鉄道を愛し、2015年スタートの「六角精児の呑み鉄本線・日本旅」(NHKBSプレミアム)で、鉄道ファンの新ジャンル「呑み鉄」を定着させた。単線非電化のローカル線の旅が中心で、JRの輸送密度1000人未満の路線はここまで15回、番組に登場している。留萌線(留萌~増毛)、石勝線夕張支線、三江線は廃線になった。只見線の応援を続け、17年に六角精児バンドで「只見線のうた」を発表している。
◆中嶋文明(なかじま・ふみあき)81年入社。10月1日の全面復旧に向けて、新たに架けられた第5只見川橋梁を試験走行する列車の写真を寄せてくれたのは、福島県金山町在住の星賢孝さんです。この夏、公開されたドキュメンタリー映画「霧幻鉄道 只見線を300日撮る男」の主人公となった郷土写真家で、奥会津と只見線だけを撮影してきました。開通まであと12日。「本当にうれしい。でもこれからが正念場だ」と話しています。
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