新総合経済対策はまたもや「規模ありき」なのか 前年度繰り越しを使えば補正予算は小規模に

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不幸中の幸いというべきか、計上したものの年度内に使い切れず、さらに繰り越しもしない予算失効額(不用額)は、2021年度の一般会計で6兆3028億円と過去最多となった。使い切れないなら繰り越すこともあきらめて無駄遣いしない、ということなら、無駄に繰り越すよりもまだましである。

歳出の不用額は、コロナ前は例年1.5兆円前後だった。2020年度は3兆8880億円で、2021年度はそれよりも多い。2020年度から2021年度に繰り越した歳出予算は、2021年度に使い切れなければ不用となる。コロナ禍による混乱の影響はあるとはいえ、使い切れないのに無理に繰り越したと思しき歳出予算がそれなりにあったということの証左だろう。

3度目の巨額の繰り越しや不用は何としても避けるべきだ

これから策定が本格化する今年度の新たな総合経済対策や2022年度第2次補正予算に話を戻そう。

2022年度の一般会計は、当初予算として107兆5964億円を計上し、5月31日に成立した第1次補正予算ですでに2兆7009億円が増額されている。そのうえに2021年度からの22兆4272億円の繰り越しがあるから、合計して132兆7245億円もの予算が執行可能な状態となっている。

この金額は、すでに2021年度の実質的な歳出規模とそうとう近い水準になっている。2021年度の実質的な歳出は、繰り越しや不用額を差し引くと、144兆6495億円(丸めの誤差あり)となるからだ。

予算が国会で承認された年度と実際に歳出を執行する年度とで過剰に食い違うことを避け、巨額の繰り越しや不用を常態化させないという観点からすれば、コロナ禍や物価高への対応を加味しても、2022年度内に新たに組む補正予算は10兆円もあれば、昨年度並みの規模になるから十分だといえる。

10兆円の補正予算を、少ないと言うべきではない。これを少ないと言うのは、コロナ禍で金銭感覚が麻痺したと言わざるをえない。なぜならば、コロナ前の第2次以降の安倍晋三内閣では、一般会計の補正予算は3兆円前後の増額だったのだ。桁が1個違っている。

今後は、コロナ禍が収束に向かうにつれて、民間で自律的な回復が期待され、円安の影響についても、インバウンド(訪日外国人観光客)需要などのメリットがデメリットを相殺することが想定される。そうなれば、GDP(国内総生産)ギャップが民間の自発的な経済活動によって縮小していくから、それに輪をかけて財政出動でGDPギャップを縮小させる必要性はなくなっていく。こうしたコロナ後の状況を見据えて、コロナ禍での過剰な財政依存を漸減させていくような総合経済対策が、いま求められている。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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