7月10日投開票の参議院選挙。各政党が議席を得るためにしのぎを削っている。与野党の選挙公約の違いは、当然ながら顕著だが、なぜか妙に一致しているところがある。
それは、「新自由主義」批判である。
野党は、これまでわが国で賃金がなかなか上がらない一方で、富裕層がその資産を大きく増やして経済格差が拡大し、一部の企業が巨額の利益を上げているのは、新自由主義の考え方が経済全体を支配しているからだとみている。この状況を打破すべく、「新自由主義」批判を展開している。
野党だけでなく、与党も「新自由主義」批判を展開している。岸田文雄首相は、「新しい資本主義」を掲げている。資本主義の歴史は、レッセフェール(自由放任主義)から福祉国家、福祉国家から新自由主義へと2度大きく転換し、その都度、市場(民)中心か国家(官)中心かと軸足を変えてきた、との認識を示す。
そして、新しい資本主義は、市場も国家も協調して、官民連携の資本主義を新たに築いていくことと説明している。新自由主義は、乗り越えてゆくべきものと捉えている。
与野党ともに、「新自由主義」批判の大合唱だ。「新自由主義」とレッテルを貼れば、今や何でも「悪者」扱いできる。
新自由主義批判が行き着く先とは?
確かに、小泉純一郎内閣期には、規制緩和や郵政民営化や構造改革特区など、「新自由主義」的な色彩を帯びた政策が実行された。しかし、それは2000年代前半である。第2次以降の安倍晋三内閣は、2010年代において7年8カ月にわたる長期政権だったが、幼児教育無償化や同一労働同一賃金の促進、介護職員の処遇改善などとても新自由主義とはいえない政策も多く実施された。
岸田内閣以前に、わが国で新自由主義的な政策が大々的に展開されていたわけではない。だから、与野党がこぞって「新自由主義」を批判したところで、参院選後に政策が大きく転換するわけではない。
では、この批判の矛先は、実のところどこに向かっているのだろうか。
それは、企業の内部留保である。
与野党とも、意味合いに違いはあるが、企業が内部留保を貯め込み続けていることを問題視している。そこは、妙に一致している。
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