9月14日に開催された経済財政諮問会議で、岸田文雄首相は、10月中に取りまとめる新たな総合経済対策に向けて、議論を進めるよう指示した。この会議で、岸田首相は、「輸入価格の上昇により、海外への所得流出が続く状況を抑制していく必要があります。ゼロエミッション電源の活用や省エネの促進に加え、足元の円安メリットをいかした国内企業への回帰と供給力の強化、農林水産品の輸出拡大、インバウンドの回復など、わが国の稼ぐ力を強化する取り組みが重要」と言及した。
昨年度の30兆円規模を目安にしろという声も
これが号砲となってか、自民党内では早くも、過去最大規模となった30兆円超の2021年度補正予算を目安に、今回の総合経済対策も大規模にすべきとの声が出始めている。
その少し前に、7月29日に公表された2021年度決算概要では、一般会計における2021年度から2022年度に繰り越される歳出予算が、22兆4272億円と、2020年度の30兆7804億円に次いで過去2番目に大きい額となったことが明らかとなった。
東洋経済オンラインの拙稿「総選挙前にこれ以上の巨額補正予算が不要なわけ」でも言及したように、近年では、秋になると補正予算を編成するものの年度内に使い切れずに次年度に繰り越すことが常態化している。特に、コロナ禍が直撃した2020年度以降、その規模が桁違いになってしまった。
2021年度の一般会計歳出は、当初予算として106兆6097億円を計上したが、そこへ2020年度から30兆7804億円の繰り越しが入ってきたうえに、35兆9895億円もの補正予算を組んだことから、合計して173兆3796億円も使える状態となっていた。補正予算が成立したのは2021年12月20日であり(これでも、例年よりも早いほうである)、この段階で年度末までは残り3カ月しかなく、使い切れないことは明らかだった。
先述のとおり、結局、22兆4272億円を2022年度に繰り越す羽目となったが、これほどまでに、予算が国会で承認された年度と実際に歳出を執行する年度とで食い違うのは、やはり度が過ぎていると言わざるをえない。
2020年度の大規模な繰り越しについては、百歩譲って、前例のないパンデミック(感染症の世界的流行)に対応するためにあらかじめ多めに予算を計上する必要があったという言い訳は、コロナ禍初期ゆえありうるかもしれない。
しかし、2021年度は、コロナ禍が始まって2年目に入っていた。2020年度と同じようなコロナ禍を言い訳とした過剰な歳出予算の計上や繰り越しは、許されない。2年連続で20兆~30兆円もの繰り越しが生じたが、こうした巨額繰り越しを常態化すべきでない。
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