仮面ライダー「大人向け商品」が徐々に広がる事情 2万~3万円する変身ベルトが売れる理由とは

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だが、2009年に潮目が変わり始めた。当時、発売していた「仮面ライダーディケイド」の子供向けベルトが大ヒットしたのだ。このベルトの特徴は、ライダーカードを装着することで、異なった演出を楽しめる点だ。

仮面ライダーディケイドの変身ベルト
2009年に発売された仮面ライダーディケイドの変身ベルト。セットしたカードと連動するというコレクション要素が人気を集めた(写真:© 石森プロ・東映)

この大ヒットを受け、仮面ライダーの認知度がさらに向上。もう一度大人向けの開発を目指し、リニューアルしたのがCSMシリーズだった。時を同じくして、バンダイは2009年から「プレミアムバンダイ」というEC(ネット通販)を開始。玩具専門店に行かずとも、気軽に購入できる仕組みも整えた。

直近では現行の仮面ライダーシリーズと並行した変身ベルトもでてきている。今まで放映していた仮面ライダーシリーズのメインターゲットは子どもだったが、近年は最初から大人をターゲットにした作品が作られるようになった。

例えば2016年にアマゾンプライムで配信された「仮面ライダーアマゾンズ」はバイオレンスな描写も含まれる作品だ。2022年10月にアマゾンプライムで配信される「仮面ライダー BLACK SUN」は日本映画を手がける白石和彌氏が監督を務め、大人も楽しめる作品になっている。バンダイはこの作品の変身ベルトの開発を進める。

「大人向けの変身ベルトがあることによって、『大人になっても好きなものは好きなままでいいんだ』というメッセージになっていると思う」(CSM開発担当者)

タカラトミーも大人消費を重視

日本玩具協会が発表した2021年度の日本国内における玩具市場規模は、少子化にもかかわらず8946億円(希望小売価格ベース)となり、現在の形で調査を始めた2001年以来過去最高となった。ポケモンカードや遊戯王など、発売開始から20年以上を経て、二世代で遊ばれているトレーディングカードや、人気アニメのフィギュアなどが貢献した。

当然、大人向けの玩具も市場の拡大に寄与している。バンダイナムコホールディングスの2021年度のトイホビー事業の売上高は3736億円と前期比24%増加した。ガンプラやフィギュアなど大人向けの商品が好調だったとしている。

バンダイのライバル、タカラトミーも2021年に発表した中期経営計画において「アソビ心をもつ人たちを子どもから大人へ」と方針を掲げ、年齢層の拡大を進めている。大人向けに塗装やデザインなどを専用の金型を用いて、リアルに再現した大人のためのトミカシリーズ「トミカプレミアム」などの販売がその一例だ。「好きな物を発信していく人が増え、共感する人たちが一定数増えていると感じている」(同社関係者)。

「おもちゃ=子どもだけのもの」という概念は崩れつつある。購買意欲の高い大人の需要をどれだけ取り込めるかが、玩具メーカーの成長に欠かせないポイントになっている。

武山 隼大 東洋経済 記者

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たけやま はやた / Hayata Takeyama

岐阜県出身。東京外国語大学国際社会学部モンゴル語専攻卒。在学中に西モンゴル・ホブド大学に留学。2021年東洋経済新報社に入社し、現在ゲーム・玩具業界を担当。

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