フクシマの教訓を置き去りに進む原発再稼働の今 マジックワード「バックフィット」の正体

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続いて、これまでのバックフィットの適用数を尋ねた。返ってきた答えは、関電火山灰問題の「命令」を含む11例(2020年4月時点)。このうち基準不適合と認めて運転を停めたことは一度もない。

回答から浮かび上がってきたバックフィットの基本的考え方は以下のとおりだ。

・基準不適合だけではなく、規制委の要求引き上げにも基づく
・運転停止を原則としていない

そもそも地震や津波、火山噴火といった自然災害は予知できない。基準不適合が判明した場合は即座に運転を停めて安全対策を急ぐべき──というのがフクシマの教訓だったはずだ。だとすれば、このバックフィットの運用はフクシマの教訓を無視しているではないか。秘密会議の隠し録音によれば、運転を停めたくないため、基準不適合と認めることを回避したようにも聞こえる。最終的にバックフィット命令を出したのは、目論見が外れて関電が強硬姿勢に出てきたからにすぎない。規制委がフクシマの教訓を生かしているかのように装うため、「バックフィット」というマジックワードを使っている疑いが浮かんできた。

事故前と変わらない原発規制

「バックフィット」と「バックフィット命令」の違いについて、定例会見で更田委員長に直接尋ねた。すると、更田委員長は「バックフィットとバックフィット命令は別物です。わかっています?」と、少し得意気に問い返した後、「バックフィット命令というのは、バックフィットを実現するときの方法の1つでしかない。DNP(関電火山灰問題)より先行するバックフィットはいくつもあって、それぞれさまざまなやり方でバックフィットを実現させてきた」と、またしても「バックフィット」の意義をアピールした。

2019年5月29日、定例の記者会見で、規制委が進めてきた数多くのバックフィットを自画自賛する更田委員長(写真:集英社新書プラス)
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