コロナ禍の政府説明に不信感ばかり募る根本原因 「リスクコミュニケーション」の専門家が分析
シンプルさと科学的エビデンスの伝達を欠いた政府
――この間の日本政府の対応、とくにトップの情報発信をどう見ていましたか。
ひとことで言えば、理解を求めるためのメッセージのシンプルさと政策に関する科学的エビデンスの伝達を欠いていたことに尽きると思います。
例えば、安倍晋三・前首相の昨年3月の会見は感染対策と同時に、細かな経済政策に相当の時間を費やしていました。官僚による事務説明のようで、国家のリーダーが緊急時に国民に向けてする演説としてはふさわしくなかった。
時間も長すぎました。訴えたいことの核心、方向性が見えませんでした。これから何をやるのか、どういう理由(根拠)があるのか、国民に何を求めるのか。もっと国民へ簡潔に語りかけるべきだったと思います。
「専門家会議はさておき、日本政府から出される情報はよくわからない」。これがこの1年あまりの、多くの日本人の実感ではないでしょうか。感染対策については基本、「予防をしっかりお願いしたい」と言うばかりで、政策の意味や理由を語らず、予想される結果も具体的ではなかった。
経済についても同様です。その時々の細かな政策メニューは語られても、経済全体に対するリスクは定量的に説明されなかった印象です。国民の理解を得るはずが、逆に不信感を高めたのではないでしょうか。
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