コロナ禍の政府説明に不信感ばかり募る根本原因 「リスクコミュニケーション」の専門家が分析
――リスクコミュニケーションにおける対話の重要性をもう少し詳しく教えてください。
学問的分類では、リスクコミュニケーションには3つの種類があります。①コンセンサス・コミュニケーション、②ケア・コミュニケーション、③クライシス・コミュニケーションです。
国民との合意を形成するようなパターンは、①のコンセンサス・コミュニケーションです。情報の送り手、情報の受け手。その両者が参加し、情報を提供し合って、一緒に合意(コンセンサス)を形成します。リスクに対して、社会全体で意思決定をするための意見や情報を交換するわけです。
会合に「情報交換会」という名前が多い理由
例えば、神奈川県の食の安全に関する審議会では、県の担当者や大学の教授らに加え、一般の主婦も参加し、会合には「情報交換会」という名称が付いていました。リスクに関する会合に情報交換会という名前が多いのは、合意形成の目的があるからです。
扱い方や対処について社会的に合意ができているものに関するコミュニケーションは、②のケア・コミュニケーションです。殺虫剤の扱い方のようなもので、科学的情報を共有するにも専門家意見が重んじられます。医学では、比較的この傾向が強いです。
――3番目のクライシス・コミュニケーションも双方向性の要素を含んだものですか。
少し性質が違います。差し迫った緊急事態、それを前にした危機対応についてのコミュニケーションが、クライシス・コミュニケーションです。
わかりやすい例は、東日本大震災に伴う福島原発の事故対応ですね。原発事故のような一刻一秒を争う緊急時になると、双方向性に重点を置く時間的余裕はありません。トップ層が判断し、半ば一方的にですが、必要最小限の情報を国民に伝えることになります。端的に、シンプルに、です。
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