コロナ禍の政府説明に不信感ばかり募る根本原因

「リスクコミュニケーション」の専門家が分析

その点、政治リーダーのコミュニケーションは悪かった一方で、初期段階の専門家はテレビや新聞に積極的に出演し、SNSも使い、国民の疑問に答えようという姿勢が強かったと思います。

この「疑問に答える」は、リスクコミュニケーションでは、とても重要なプロセスです。先ほど触れたニュージーランドのアーダーン首相の評価が高いのは、初期メッセージが明確だっただけでなく、フェイスブックを通じて寄せられた国民の疑問に直接回答した、その姿勢があったからです。

もちろん、今回は未知の感染症への対応は前例がなく難しかった。リスクに関して無知な状況から始まった。しかし、だからこそ、対話する姿勢やエビデンスに基づいたメッセージをもっと打ち出してきていれば、ここまで国民の不信感は大きくならなかったとも思います。

「こちらが正しい」と科学者が断言するのは難しい

――ではコロナ対応に当たった科学者のリスクコミュニケーションは、どうだったのでしょうか。

科学者(今回の場合医療の専門家)は、最終的に「科学的に正確」であることを踏み越えた発言は難しいです。立場上、「100パーセント安全」「こちらが正しい」と断言することは難しい。だから、発言が曖昧に響いたり、普通の人にはわかりにくくなったりしやすい。

そこは科学者なので仕方ないと、私は考えています。その問題に関して自信がないからではなく、科学的に正確であろうとする姿勢があるからであり、おそらく、個人の意見としてはこちらが正しい、という確信はお持ちでしょう。

でも、そういうことは公的に言わないし、言えない。だからこそ、政治家が専門家による科学的エビデンスに基づいて、リスクについての行政府の判断や政策に関する意思決定を説明する必要があります。

今回、医療関係者の方たちの個人的努力がとても大きかったと思いますが、専門家の発言には元来そういう限界があることからも、責任を持つ政治家自身が、抽象以外の具体的メッセージを出すべきだと思います。

最近、河野大臣の「ワクチン接種に関するデマ」に警鐘を鳴らす発言がありました。それを批判する人もいるようですが、この点に限ってはワクチン接種を推進する立場の政治家として勇気のある発言だった、と私は評価しています。

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