ブックオフを批判する人が絶対に触れない「真実」 その書棚が街の本屋よりずっと「多様」な理由

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坂本もブックオフを開店する前、ある古書店主の勧めで古本市に足を運んでいる。

しかし、坂本はそこで目にした光景に納得がいかなかったようだ。彼はそこでの古書の買い入れの様子を「わけのわからない談合のようなスタイルで価格が決められるよう」だと言い、「そもそもどういう根拠で値段が決められているのか見ていてさっぱりわからなかった」と回想している(坂本孝他『ブックオフの真実』)。

そして、そのような専門性の高い取引では、顧客が納得する値段で古本を扱うことが不可能であると悟ったのである。

もちろん、古本市での値段の決定は、その道に通じた目利きが行っているため、無根拠ではない。

しかし、古書業界の門外漢だった坂本の目には古書組合で行われる古書買い入れの様子が、あまりにも閉鎖的に見えたのである。

その結果、坂本は以下のように決意する。

古臭いかたちでしか古本を入手できないなら、古本組合なんかには入らず、自分たちのやり方でやってみよう、価値判断の基準をうち独自な簡単なものにしよう、と意見がまとまりました。その時点で、いまのブックオフに通じるテーゼが生まれました。すなわち――。
本の内容は一切問わずして、きれいか汚いか、新しいか古いかで値段を決めよう、と。(坂本孝他『ブックオフの真実』)

そうして坂本は古書市のシステムに頼らない独自のシステムをブックオフで作ろうとしたのである。

近隣住民の本棚が商品になる

古書市を利用せずに古本を多く集めるとなれば、頼ることができるのは直接店に持ち込まれる古本しかない。そのとき坂本が目を付けたのが「家庭の本棚」であった。

そもそも坂本がブックオフの1号店を相模原の古淵に定めたのは、そのエリアの周辺に団塊ジュニア世代にあたるホワイトカラーの家族が多く住んでおり、彼らの家庭にある本棚に目を付けたからである。(この辺りの経緯は前述の書籍『ブックオフの真実』で坂本が語っている)

彼らは本を好む世代であるが、書籍を置く量には限界がある。その限界を超えた分を店に持ち込んでもらえるのではないか――。坂本の中にはそのような目算が働いていた。

その予想は大幅に当たった。坂本たちが作った「読み終わった本を、お売りください」というキャッチコピーの効果もあって(これは、今も使われているキャッチコピーだ)、近隣住民のいらなくなった本がブックオフにどんどん集まってきたのである。そうして集められた本は、基本的にその店舗で売られることになる。

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