それは、ブックオフが多店舗化しても同様で、このシステムは「出し切り」としてブックオフの経営上の重要な要素となった。
「出し切り」とは、その日に買い取られた商品は同一店舗でその日のうちに売りに出すというものであり、ブックオフの社内では「鉄の掟」とされているという。
そして、そこで周辺住民から買い取りに出された本は、かつて古書市で古書店主たちが目利きをしたような内容的な選別が行われないために、通常の古書店では扱われないような商品までが雑多に置かれることになる。
その店舗の周辺に誰が住んでいるのかという偶然性によってその書棚が決まるのだ。
こうした品揃えについて、坂本は以下のように述べる。
「ともかくお客さんが持ってくる本だけを販売して勝負することにしたんです。マーチャンダイジングを放棄して、「お客さんが持ってくる本だけをきれいに磨いて、販売しよう」「お客さんが持ってくるのが正解であって、俺の考え方のバランスが悪いのだ」と発想を変え、現状を肯定した上でバランスよく売る方法を考えました」(村野まさよし『ブックオフの真実』)
「マーチャンダイジングの放棄」によって、ブックオフの売り場はさまざまな本がひたすらに並べられることとなった。
本連載の第2回で、DJのTelematic Visions氏が、「資本主義の残骸」と呼んだような、雑多な商品までもがひたすらに置かれる理由は、ここにある。
こうして、坂本が既存の古書市に対するアンチテーゼとして行った古書店のシステムが、「意図のない」書棚を産むことになったのである。
ブックオフへの賛否両論、そして多様性の獲得
こうしたブックオフのシステムに対しては、大きな反響が巻き起こった。
その中には、こうした仕組みを「革命」と評する声も多くある。例えば、1990年代の商業雑誌を覗いてみると、ブックオフについては以下のような文言が並んでいる。
・古本業界の革命児「ブックオフコーポレーション」のユニークな経営(『実業往来』1994年5月号)
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