クラウンの「FR廃止」が必然だと言い切れる訳 FF+ハイブリッドは欧州車にはない武器になる
2022年7月に発表され、9月1日に発売開始となったトヨタの新型「クラウン」。16代目となる新型の注目点は、4種類のスタイルを用意したことにある。
セダンだけでなく、クロスオーバー、スポーツ(SUVクーペ)、エステート(SUV)という4スタイルを、同じクラウンの名称で1年半の間に矢継ぎ早にリリースするというのだ。恐るべき開発力と言えるだろう。
少しマニアックな目線でいえば、新しいクラウンは、1955年の初代モデルから継承してきたFR(後輪駆動)レイアウトをやめてFF(前輪駆動)レイアウトがベースとなったこともトピックだ。
最初にリリースされる「クラウン クロスオーバー」は4WDとなるが、後輪の駆動にはモーターを使う。つまり、プラットフォームはフロントにエンジンを横置きする、FFレイアウトだ。
まさか、クロスオーバーだけがFFレイアウトのプラットフォームで、セダンなどの他のスタイルが別のプラットフォームとなるとは考えにくい。他モデルも当然、FFプラットフォームを採用することになるだろう。
このように、「4スタイル同時開発」と「FFレイアウト採用」が新型クラウンの2大トピックだが、その背景にあるのは「TNGA」だ。
「一括企画」のために生まれた開発手法
TNGAとは「トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー」の略であり、トヨタが2010年代前半から取り組んでいる、新しい設計開発の手法だ。
従来、車の開発は、モデルごとに進められてきた。またパワートレインは、モデルとは別に独自に開発されることもあった。しかし、これではモデル間で設計やパーツの流用が進まず、効率が悪い。
そこで、個別に開発するのではなく、すべてをまとめて企画・開発しようと生まれたのがTNGAという開発手法だ。
こうした手法は「一括企画」と呼ばれ、トヨタ以外でも広く採用が進んでいる。有名なのはフォルクスワーゲンの「MQB」で、トヨタより早い2010年代前半からこの手法で開発されたモデルを登場させている。
具体的に言えば、パワートレインやプラットフォームを“共用前提”で開発する。これにより、1つのパワートレインやプラットフォームから、複数のモデルを作ることができる。
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