クラウンの「FR廃止」が必然だと言い切れる訳 FF+ハイブリッドは欧州車にはない武器になる

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これらのFFセダンは、非常に売れている。特にカムリは、アメリカ市場だけでもコンスタントに年間30万台規模で売れ続けているベストセラーだ。レクサスESは、中国で大人気。トヨタ車の中でも、特に市場に強く受け入れられているのがFFプラットフォームの製品なのだ。

2022年07月に一部改良を受けたレクサス「ES」
2022年7月に一部改良を受けたレクサス「ES」(写真:トヨタ自動車)

クラウンは、これまでほぼ日本国内専用車となっていたが、新生クラウンは世界市場に打って出て、年間20万台を狙うとアナウンスされている。そうとなれば、販売実績のあるFFプラットフォームを使うのが道理であろう。

なによりも、新生クラウンは“売れること”が求められているのだ。もしも、販売面で失敗するようなことがあれば、“クラウン廃止”の話も出てくるだろう。FRという伝統を守ることよりも、売れないほうがまずいはず。

ヨーロッパ車にはない大きな武器になる

トヨタとしてもベストセラーを数多く生み出しているFFレイアウトは、得意分野だ。FFプラットフォームを使って、セダン、SUVを作り分けることも手慣れたもの。

「ヤリス」に対する「ヤリスクロス」といったコンパクト部門から、「カムリ」と「RAV4」のように、ミッドサイズでも同じプラットフォームで作り分けを行ってきた実績がある。

さらに今回のクラウン クロスオーバーに使われる、「前輪のハイブリッド+後輪のモーター」という電気式4WDも、トヨタが得意とする方式だ。

「クラウンクロスオーバー」は全車がハイブリッドの4WDとなる
「クラウン クロスオーバー」は全車がハイブリッドの4WDとなる(写真:トヨタ自動車)

トヨタが長年培ってきたハイブリッドを使いながら、電動化と4WD化、高性能化のすべてを満足させる技術である。海外市場で戦うことになるクラウンにとって、ヨーロッパ車にない魅力は大きな武器となるに違いない。

世界を舞台として失敗が許されない、新型クラウン。グローバルで確実に売っていくためには、従来のようなFRプラットフォームを使うよりも、実績があり派生モデルを作りやすく、そしてライバルにない新たな魅力をプラスするFFプラットフォームがベストだった。それが、新型クラウンFFレイアウトを選択の理由だろう。新生クラウンにとって、このレイアウトは必然だったのだ。

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鈴木 ケンイチ モータージャーナリスト 

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すずき けんいち / Kenichi Suzuki

1966年生まれ。茨城県出身。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。レース経験あり。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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