永守重信氏の「後継者難」に映る日本電産の泣き所 「優秀な外様」とは理想の親分子分関係を築けない

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日本電産創業者の永守重信氏
日本電産創業者の永守重信氏(撮影:ヒラオカスタジオ)

モーター業界で世界シェア首位(2021)である日本電産(2023年4月1日付で「ニデック(Nidec)」に社名変更予定)のトップ人事が話題を呼んでいる。

10月から新たな経営体制へ移行するのに伴い、関潤・社長兼最高執行責任者(COO)(61)が退任し、後任に創業メンバーの1人である小部博志副会長(73)を起用するという報道が8月25日に流れたからだ。

日本電産は「当社が発表したものではなく、また決定した事実もございません」としているものの、7月に創業者の永守重信会長(78)が「2年をメドに株価やハードワークを基本とする企業文化を復活させるため、新しい経営体制とする」と公言していることから、既成事実と受け止めていいだろう。小部氏の年齢からみて、本格的な新経営体制移行までの暫定政権と見られる。今後はこれまでの反省も踏まえて、生え抜きの中から選ぶというトップ人事に舵を切りそうだ。

CEOになった関潤氏は1年を待たずしてCOOに

日産自動車でナンバー3に当たる副COOを務めていた関氏は、2020年4月、日本電産創業者の永守重信会長(78)から声がかかり同社のCOOに就任。2021年6月に永守氏からCEO(最高経営責任者)を譲られたが、2022年4月に1年を待たずしてCOOへ降格。永守氏がCEOに復帰した。

関氏が降格となった6月、永守氏は「逃げない限りはCEOの後継者として育てる」とブラックユーモアともとれる一言を口にしていた。が、結果的には、関氏は転身から2年半にして退社することになってしまった。6月に口にした「逃げる気は、まったくない」という発言は関氏最後の抵抗だったのだろうか。

関氏をスカウトしたのは、自動車業界に明るい同氏の経験を生かし、車載事業を次世代の屋台骨に育てようとしていたからだ。その期待を裏切るかのように、車載事業が2022年4~6月期に2期連続で営業赤字になった。

2022年3月期は連結純利益が過去最高を更新したが、永守氏は関氏の経営力に疑問を持ち始めた。加えて株価下落が関氏にとどめを刺した。2021年6月時点では1万2000円台で推移したが、2022年4月には8000円台にまで落ち込んだ。高株価企業を志向してきた永守氏にとって、「1万円を割る状況は耐えられない」と言わしめた。さらに、経営路線をめぐっても溝が生じていた。

コロナ禍、ウクライナ・ロシア危機の影響による世界経済の低迷、半導体不足、原材料の高騰など、足を引っ張った外的要因も大きい。だが、経済環境が悪いから業績が悪化した、という言い訳は永守氏に通じない。

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