永守重信氏の「後継者難」に映る日本電産の泣き所 「優秀な外様」とは理想の親分子分関係を築けない
見ていないふりをしながらも、周囲から情報収集し、つねに見られていることを本人にもわからせる。こうして、買収先のリーダーも永守氏の分身に育てていくという管理手法である。M&A先でも、永守氏の期待に応えられない人は切られている。同様の方法を日本電産本体の経営陣にも適用したと解釈していいだろう。
ある調査で永守氏は、「社長が最も注目する社長(CEO)」の座をここ数年死守している。一方、永守氏と同じような働き方(正月以外は仕事)ができるような人は稀有だ。永守氏の高い期待に応えられる人は、はたしてどれほどいるのだろうか。後継者候補をスカウトしては退職。はたして永守氏の眼鏡にかなう後継者は見つかるのだろうか。こう問う声を多く聞く。永守氏は晩節を汚すことにならないか、という指摘もめずらしくなくなってきた。
「125歳まで頑張る」
このように懸念される最大の要因は、永守氏の年齢である。少し老けたな、と見ている人もいるが当たり前である。2年後に80歳を迎える。「年寄り扱いしないでほしい。至って健康。どこも悪いところはない」と永守氏は相変わらず精力的である。自宅内にトレーニングルームを設け、毎朝、トレーナーの指導のもとトレーニングに励んでいる。
今回のトップ人事を見て、さっそくSNS上で「老害」と評している識者もいるが、永守氏本人に老いの意識はない。いや、「老害」という言葉自体が、「人生100年(歳)時代」における(年齢)差別用語であるのではないか、と思えてくるほど、永守氏は意気揚々としている。株主総会ではいつも永守リスクについて同じ質問が飛び出す。
「永守さんは、いつまでトップを続けられるのですか」
永守氏からはこう答えが返ってくる。
「尊敬する松下幸之助さんが亡くなられた94歳まで務めます」
ところが、最近は「125歳まで頑張る」とまで言い出した。
永守氏は酒もたばこもやらない。徹底した健康オタクである。奥さんも栄養管理に気をつけており、「海外出張先にまで秘書に連絡し、今日はどのような食事をとりましたか、とメニューチェックしている」(永守氏)ほどだ。
老いの意識はない永守氏だが、時間の大切さを熟知しているだけに、「残された時間」について焦りを感じ始めているのではないだろうか。何もやり残したことがなく終活のみを考えていればいい常人とは異なり、課題が山積されている永守氏にとっては、焦るなというほうが無理な話である。
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