永守重信氏の「後継者難」に映る日本電産の泣き所 「優秀な外様」とは理想の親分子分関係を築けない

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永守氏と関氏はともに早くして父と死別し、苦学した苦労人同士ということもあり、お互い親近感を感じていたようだ。関氏をスカウトした際は、経営手腕、人格ともCEOにふさわしい人物と高く評価していた。

永守氏は熱しやすく冷めやすいのか、これまでも、「優秀な外様」にほれ込み、次世代候補として三顧の礼を持って迎えた。ところが、期待どおりの成果が上げられないと判断すると、永守氏はまたたくまに冷めていった。そして、降格などで罰する。その結果、「優秀な外様」たちは、次のとおり相次いで退職していった。

呉文精氏(2013~15年):カルソニックカンセイ(現マレリ)元社長から日本電産代表取締役副社長に。退職後、2016年6月にルネサスエレクトロニクス社長、2020年6月から日本アビオニクス会長(社外)を務める。

片山幹雄氏(2014~21年):シャープで代表取締役社長、会長を務め、顧問として日本電産に入社。2015年6月、代表取締役副会長に就任。2020年4月に代表取締役副社長へ降格。そのわずか2カ月後に代表取締役だけでなく取締役の職を解かれる。2021年10月、日本電産株式会社の特別顧問に。

吉本浩之氏(2015~20年):タイ日産自動車社長などを務め、2018年から日本電産代表取締役社長に。2020年に関氏と交代。退職後、2021年6月1日からアメリカン・エキスプレス・インターナショナル, Inc.社長(日本代表)に。

「優秀な外様」たちはいずれも文字どおりの優等生

少しばかり在任期間が長く見える片山氏は東京大学工学部出身で液晶の研究開発に専念してきたエンジニア。とはいえ、単なる技術一辺倒の人物ではなかった。シャープの入社面接の際、「どのような仕事がしたいですか」と聞かれ、「経営がしたいです」と答えたという話はシャープでも語り草になっていた。

そういう意味では、片山氏は永守氏から口説かれて入社したこともあり、日本電産社長就任に意欲を燃やしていたのだろう。ところが、副会長から副社長へ降格、さらに、代表取締役、取締役の役職も剝奪された。

「すぐやる、必ずやる、できるまでやる」という永守氏の名言を当てはめれば、「すぐに問題解決にとりかかれ、期待どおりの結果を出せ、未達成の理由を外部環境のせいにするな」と翻訳できようか。永守氏がほれ込んで採用した「優秀な外様」たちは、いずれも文字どおり優等生だった。零細企業、中小企業時代の日本電産に入社試験、面接を受けて来た人たちとは、まったく異なるエリートたちばかりだ。

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