封印されていたパンドラの箱がついに開いてしまった。
モーター世界最大手の日本電産のことである。9月2日に関潤社長の退任を決定して以来、メディアからの猛批判を受け続けている。
創業者である永守重信氏(現会長)はすでに78歳。その後継者をめぐって日本電産は迷走を繰り返してきた。カルソニックカンセイ(現マレリ)元社長の呉文精氏、シャープ元社長の片山幹雄氏、関氏と同じく日産出身の吉本浩之氏と、いずれも後継者含みでヘッドハンティングしたものの、「期待どおりでない」と判断するや永守氏は一流経営者たちを次々に辞任へと追い込んだ。
日産のナンバー3(副COO)だった関潤氏を三顧の礼で日本電産に迎え、最高経営責任者(CEO)に据えたのは2021年6月のことだ。しかし、1年も経たない2022年4月には業績悪化を理由に最高執行責任者(COO)に降格。そして9月には会社から事実上、放逐した。
業績悪化とはいうものの、関氏が社長だった2022年3月期、日本電産の決算は連結の売上高、営業利益、純利益のいずれも過去最高を更新している。確かに関氏が担当した車載事業こそ、2022年1〜3月期に赤字を計上するなど厳しい状況が続いたが、これは原料高や中国におけるロックダウンの影響などによるところも大きい。
繰り返した関氏への罵倒
関氏の退任を決めた9月2日の取締役会後の記者会見で永守氏は、「私から首を切るようなことはいっさいしていない」と述べていた。だが、実際には日本電産グループの全幹部が参加する幹部会議や役員宛のメールで、「Q1(=第1四半期の業績)未達なら退職退任を自ら申し出るのが常識ある人の判断だろう」「もう辞めたらどうや」「日産のナンバー3というからどんだけのものかと思っとったが、こんなものかと失望した。私の55年間の経営者人生で、これほどの大失敗人事をしたことはない」など、関氏を罵倒する発言を繰り返している。関氏ならずともプライドがズタズタになるはずだ。
永守氏は記者会見で、「罵倒ではなく叱責」「叱責を受けて喜んでいる社員もいる」と述べていたが、何をか言わんやである。カリスマ経営者としてもてはやされてきた永守氏だが、そのワンマンぶり、パワハラぶりは、つとに世に知られている。
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