この問題もまた、異常に高い目標設定と行き過ぎたプレッシャーが招いた結果だろうか。
日本電産の100%子会社「日本電産テクノモータ」(以下、テクノモータ社)で、顧客と取り決めた仕様を無断で変更していたことが明らかになった。すでに一部報道で伝えられていたこの問題を筆者が取材したところ、日本電産の体質を象徴的に表すものだったことが浮かび上がった。
問題が発覚したのは、今年6月。テクノモータ社の中国法人である日本電産芝浦(浙江)有限公司で、空調機器用のファンモーターの「巻線」と呼ばれる部品の素材に、顧客に仕様書で示したポリウレタン銅線ではなく、アルミ線を銅でコーティングした銅クラッドアルミ線に変更しているとの内部告発があったのだ。
納入先はダイキン工業や三菱電機、日立ジョンソンコントロールズ空調など4社で、無断で行われていたという。
現場の声を幹部が押し切る
事情を知るテクノモータ関係者はこう明かす。
「来年夏発売の新モデルに向けて顧客に売り込むネタとして、テクノモータ社の開発部門が検討していたのが銅クラッドアルミ線を使った巻線です。今まで使っている銅100%のポリウレタン銅線の巻線よりもコストを抑えることができるのが売りでしたが、それを聞いた幹部が 『すぐに使え』と言い出しました」
ただ、上記のとおり、顧客に示した仕様書ではポリウレタン銅線を使うことになっている。無断で仕様変更することに、現場からはさすがに問題視する声が上がったが、それでもテクノモータ幹部が押し切ったという。
「時期的には(3月の)決算の締めを控え、テクノモータ社は日本電産本社からの厳しいプレッシャーで原価を抑えて収益を上げる必要に迫られていた。その後もコストが安いからと、ずるずると銅クラッドアルミ線を使ったモーターの生産が続いてしまった」(テクノモータ社関係者)
一般に、ポリウレタン銅線が銅100%からなるのに対して、銅クラッドアルミ線はアルミが60%、銅が40%程度になる。巻線は、モーター内部のローターが回転するための力を発生させる「ステーター」と呼ばれる部分の核となる部品だ。材料を変えることで安全性などのリスクはないのだろうか。
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