東海大学元教授でモリモトラボを主宰する森本雅之氏は、「巻線を巻きつける際に、アルミはやわらかいので銅を1とするとアルミは1.7くらい伸びる。そうすると、巻線を覆うエナメルが剥がれやすくなり、そこに水分が入れば、温度変化のたびに収縮、膨張してしまう。使い始めてから3年や5年しないと出てこないが、時限爆弾をしかけているようなものだ 。しかも、アルミを使うと抵抗が大きくて電流が流れにくくなるから、たくさん電流を流さないといけない。結果としてモーターの性能が落ちやすく、温度も高くなる 」と指摘する。
夏を過ぎてようやくストップ
内部告発を受け、日本電産では告発者からのヒアリングまでしておきながら、仕様変更による生産は続き、夏を過ぎた頃にようやく生産のストップと顧客への説明を行う方針が決まったという。
仕様が変更されたモーターをテクノモータ社から購入した顧客に取材したところ、ダイキン工業は、「当社から日本電産テクノモータ社に確認をしたところ、『空調モーターの一部の部品について、契約上の仕様とは異なる素材を採用し出荷していた』との報告がありました。同社の検査データを添え『素材は変わったが、契約で定められた性能基準を満たしている』との説明を受けました」と回答した。
ダイキン工業では、至急検査を実施して評価を行うことにしており、「検査の結果、問題があった場合には適切に対応いたします」としている。
また、品質不正問題に揺れる三菱電機は「回答を差し控える」とし、日立ジョンソンコントロールズ空調は期日までに回答はなかった。
テクノモータ社会長は日本電産トップでもある永守重信氏。社長にはシャープ出身の廣部俊彦氏が就く。かつてシャープの社長だった片山幹雄氏が、永守会長の後継者含みで日本電産に招かれた際に、ほかの幹部とともに引き連れてきた。その後、片山氏が日本電産を追われた後も日本電産グループに在籍し続けているが 、業績目標を達成するよう本体から厳しいプレッシャーにさらされ続けているという。
9月に社長を退任した日産出身の関潤氏は、異様に高い業績目標と行き過ぎたプレッシャーが不正に繋がりかねないとして、永守氏に対して見直しを求めた。ところが永守氏はこれに激怒し、関氏が会社を追い出されるに至った顛末は、これまでの記事で述べてきたとおりだ。行き過ぎたプレッシャーをかけ続ける経営手法が限界に達しつつあることは、今回の仕様変更の問題からも明らかではないだろうか。
なお、テクノモータ社における空調機器用モーターの仕様変更の問題について、同社総務部並びに日本電産本社の広報宣伝部に東洋経済編集部より質問をしたところ、期限までに回答はなかった。
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