飲料、24年ぶり値上げも「脱安売り」の厳しい現実 国内は収益悪化、海外事業との差は広がる一方

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飲料業界の原価高騰は昨年秋から深刻だったが、各社は今年10月まで値上げ時期を引っ張っている。背景には、最需要期の夏に数量を落としたくないという思惑が見え隠れする。逆にいえば、それだけ値上げの影響による数量減を恐れているというわけだ。

値上げの浸透に苦慮する日本市場とは対照的に、実は海外市場では大きく異なる景色が広がる。酒類・飲料ともに、日本ではようやく1度目の値上げに踏み切る段階だが、海外では2021年秋からすでに値上げが進んでおり、ベトナム、タイ、インドネシア、オーストラリアなど複数回の値上げが実施された国もあるのだ。

サントリー食品の石川一志常務は「海外では値上げが比較的容認されている環境だが、日本はデフレ環境が続いており(値上げの許容が)厳しい」と吐露する。

その差は業績にも

その差はすでに業績にも表れている。サントリー食品の第2四半期(2022年1〜6月期)決算では、日本事業の利益は原材料高による粗利悪化などで前年同期比34億円の減益となった。一方、海外事業は、値上げによる粗利改善で、同238億円増と大幅な増益だ。円安などの追い風もあり、海外売上比率の高い企業は国内中心の企業と比べて業績改善が顕著だ。

今後の焦点は、日本でも同様に数度の価格転嫁が進んでいくかどうかだが、10月以降の見通しは一向に立たない。サントリーホールディングスの新浪剛史社長が今年2月の決算説明会で「賃上げの原資の5割は海外事業だ」と語っていたように、業界の賃上げも国内ではなく海外事業が頼みの綱だ。

10月の値上げラッシュで、安売りの消耗戦から脱却できるか。飲料業界にとっては正念場となる。

井上 昌也 東洋経済 記者

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いのうえ まさや / Masaya Inoue

慶應義塾大学法学部政治学科卒業、同大メディア・コミュニケーション研究所修了。2019年東洋経済新報社に入社。現在はテレビ業界や動画配信、エンタメなどを担当。趣味は演劇鑑賞、スポーツ観戦。

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