有料会員限定

補助金に依存しない「稼ぐコメ農家」の生き残り策 3毛作で「行列のできるトウモロコシ」を栽培

✎ 1〜 ✎ 13 ✎ 14 ✎ 15 ✎ 最新
拡大
縮小

需要が減少し、価格下落が続くコメ。ただ、コメ農家の中には高収益な農産物を作ったり、加工品を手がけるなどの工夫で儲かる仕組みを確立しているところもある。

とうもろこし畑と鈴木弥氏
鈴木農園の鈴木弥氏(写真左)とトウモロコシの「甘々娘」(写真:鈴木農園)

特集「食料危機は終わらない」の他の記事を読む

コメの需要が減少し続ける中、農家は厳しい経営を迫られている。政府からの「補助金ありき」になっているケースも珍しくない。だが自らの経営努力によって高収益を実現する、自立した農業者もいる。

「水田3倍活用」を掲げるのが、静岡県周智郡森町の遠州森 鈴木農園株式会社。15ヘクタールの農地(水田)で1年間にコメ、レタス、食用トウモロコシを収穫する三毛作を実践する。

同社の売り上げの約5割を占めるのはトウモロコシ。森町の地域ブランドとして定着した「甘々娘(かんかんむすめ)」は、糖度18〜20度と甘く、皮が柔らかい。5月末から7月末の収穫期には農地近くの直売所でとれたてを販売、前日から行列ができるほど人気を集めている。

トウモロコシ、コメ、レタスの三毛作

トウモロコシの収穫後にはコメを植え(主食用米は2割で、残りは飼料用)、9月以降はレタスを栽培する。三毛作の農地とは別に23ヘクタールの主食用米専用の水田でもコシヒカリ、きぬむすめを育てており、8月中旬までに収穫する。

コメの売り上げは全体の2割程度だが、同社社長の鈴木弥(わたる)氏は「利益率はコメがいちばん高い」と言う。「コメは人手がかからない。田植え、稲刈りは4人で10ヘクタールを3日程度で終える」。コメは余分な肥料を吸収するため、レタスを栽培する際の肥料過多を防ぐ役割もある。水を張ることで農地の消毒もでき、コメを含む三毛作は栽培上も理にかなっている。

次ページ直販の拡大で収益性は向上
関連記事
トピックボードAD
連載一覧
連載一覧はこちら
トレンドライブラリーAD
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
特集インデックス
食料危機は終わらない
この秋、日本の食卓を襲う「食料インフレ」の猛威
「からあげクン」36年で初値上げさせた根本原因
飲料、24年ぶり値上げも「脱安売り」の厳しい現実
国内は収益悪化、海外事業との差は広がる一方
年間インフレ影響は123億円、戦略に迷走感も
輸入物価は1年で1.5倍に、物価ピークは10月?
足元の農産物インフレは一過性の現象ではない
14億人の「爆食」はいつまで続くか?
穀物生産は大国に偏在、貧困国ほどリスク増大
過去最大の干ばつ頻発、穀物生産は長期減少へ
いまこそ「都市型農業」の基盤を構築せよ
原材料の多くを中国に依存、代替先を模索する
最短で2041年の開業を予定、高まる現実味
コメ政策の行方を小野寺元防衛相に聞いた
コメの消費量は年間10万トンペースで減少
3毛作で「行列のできるトウモロコシ」を栽培
植物工場の5割が赤字、富士通やパナも不振
戦略を間違えると「暗黒期」に入りかねない
農業の応援団ほど現実の農業を潰しにかかる
農業政策に詳しい山下一仁氏に聞く問題の核心
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT
有料法人プランのご案内