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長らく値上げが行われてこなかったビール業界に、かつてない原材料や資材の高騰が降りかかっている。
アサヒビールは4月26日、家庭用ビール類など酒類を10月から値上げすると表明。その後5月から6月上旬にかけて、キリンビール、サントリー、サッポロビールも立て続けにビールの値上げを発表した。酒税法改正の影響を除けば、家庭用ビールの値上げは各社とも約14年ぶりとなる。
ビールは2020年10月に行われた酒税改正で減税となり、店頭価格が下がった影響もあって直近の各社の販売数量は拡大していた。さらにアサヒビールは、看板商品であるスーパードライのリニューアルや、居酒屋で飲むジョッキと同じような香りとクリーミーな泡を味わえる「生ジョッキ缶」の発売で「勢いが一歩抜きん出ていた」(競合メーカー社員)。
好調のさなか、先陣を切って値上げを打ち出したのはなぜか。また、若者の間で広がるアルコール離れにどう対応するのか。アサヒビールの塩澤賢一社長に聞いた。
大きなきっかけがないと値上げしづらい
――14年前はキリンビールの発表に追随する形でしたが、今回はアサヒが最初に値上げを発表しました。逡巡はありませんでしたか。
すでにキリンさんなど競合他社も値上げを発表しているが、もしかするとやらない可能性もあった。そういう意味では、私たちが最初に値上げをすると言ったのでリスクがあったことは事実だ。
値上げ実施の有無や、どれくらいの値上げ幅で行うかなど、他社の動きは開けてみないとわからない。いろいろなシミュレーションをしたが、それでもやはり、この機にやらなければいけないという判断をした。
今の状態で原材料や資材の高騰が進めば、(事業が)成り立たないところまで来ているのではと思っている。一方で将来に向けてどんどん新しい投資を打つためには、一定の利益を上げなければいけない。値上げで販売数量が一時的に下がることがあったとしても、そこは割り切りが必要だ。
――これまでビール業界はコスト高があっても、長年にわたり値上げに踏み切れずにきました。
価格戦略は一つ間違えると、その商品を殺してしまう可能性もある。
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