天才は「生まれつきか」「本人の努力か」永遠の論争 このシンプルな問いにもこれといった答えはない

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ワシリー・カンディンスキー、フィンセント・ファン・ゴッホ、ウラジーミル・ナボコフ、デューク・エリントンは皆、共感覚 [ある感覚の刺激によって、別の感覚も引き起こされること。この感覚を持つ人は、たとえば文字や数字に色がついて見えたり、音や匂いに色や形を感じたりする]を持って生まれた。

彼らは音楽を聴いたり、文字や数字を見たりすると、そこに色が見える。レディ・ガガもそうだ。「曲を書いているとき、音が聞こえてきて、歌詞が聞こえてくるんだけど、色も見えるの。音が色の壁のように見えるのよね」と、彼女は2009年の『ガーディアン』紙のインタビューで話している。

1806年、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンは、彼の代名詞にもなっている癇癪(かんしゃく)を起こして、上級貴族であるカール・リヒノフスキーに向かって噛みついたことがある。「侯爵、あなたは偶然生まれ合わせてあなたであるわけですが、私なるものは私自身を通じて私であるのです。侯爵などというものは、これまでもこれからも何千といます。しかし、この世にベートーヴェンは一人だけです」。

これに対して、私たちなら丁重にこう答えることもできるかもしれない。「確かに。ルートヴィヒ、でも君も、たまたまそのように生まれたんだよ。君のお父さんとお祖父さんは職業音楽家だった。おそらくは、そのお二人から君は、とりわけその絶対音感と音楽的記憶力を受け継いだんだよ」と。

与えられたものを、どう活かすか

絶対音感は遺伝性のもので、家系を通じて受け継がれるものだが、およそ1万人に1人にしか与えられない才能でもある。マイケル・ジャクソン、フランク・シナトラ、マライア・キャリー、エラ・フィッツジェラルド、ビング・クロスビー、スティーヴィー・ワンダー、ドミートリイ・ショスタコーヴィチ、モーツァルトも同じく、絶対音感の才能に恵まれている。

モーツァルトはまた、驚異的な音楽的記憶力(音を記憶する力)と動きを映像化して記憶する能力を持って生まれた。これによりモーツァルトは、頭に浮かんだ音と、その音を生成する場所を結びつけて、バイオリンやオルガン、あるいはピアノの正しい場所や鍵盤に瞬時に指を運ぶことができた。彼の音楽的才能はすべて、6歳になるまでに発露した。これは天性のものでしかありえない。

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