渋澤 たとえば長期で投資し続けたとするじゃないですか。30年間コツコツと積み立てた結果、それまでの苦労が報われて、良いリターンが得られたとします。
でも、ピケティに言わせれば、そこでがっちり累進課税されるということですから、何のために投資をしたのか、わからなくなってしまう。その点で、ピケティの言う議論には賛同できない面もあります。う~ん、ピケティは反長期投資家なのかも知れませんね。
格差を是正するのには何が必要か
藤野 それも、分母にリスクが考慮されていないから生じる疑問のひとつですよね。あの式の中にリスクの概念が盛り込まれていない点は、ファンドマネジャー的に言わせてもらうなら、「足りない」と言わざるを得ません。
あと、ピケティの「21世紀の資本」って、全体を通して読むと分かるのですが、格差について読み解いた本というよりも、入門マクロ経済の本だと思います。だから、国際収支や過去の成長率の推移などについて、わりと丁寧にページを割いて説明してあります。
ただ、恐らくこの本の営業戦略なのだと思いますが、出版社が「r>g」の式を前面に押し出してキャンペーンを張ったのでしょう。だから、格差について言及した箇所ばかりが強調されてしまうのですが、言っていることはマンキューなどに割と近くて、最近の経済学者の流れに沿ったものです。
中野 最後の格差を是正するのは、結局のところ制度ではなく、モラルになるのではないでしょうか。知性と知恵とモラル。誰かが税金で集めて配分すれば、そこにはピンハネの問題が生じてきますしね。
だから、知性と知恵とモラルを持って、プライベートセクターで格差を是正していくのが大事なのだと思います。
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