渋澤 相続って街の景観を壊しますよね。
中野 それは?
渋澤 だって、土地を相続するとしても、そこに実際に住んでいたら、複数の相続人で分けるのって難しいじゃないですか。
まあ、それは相続人の間で話し合って解決できたとしても、特に首都圏の土地になると、相続税もバカ高くなるから、それを払えるのかという問題が生じてくる。払えなければ物納。その後、払い下げられた土地を開発する動きになり、コインパーキングの乱設置などで街全体の景観が壊されていく。
相続税の大衆化と人口減で、日本の不動産は供給過多
藤野 今度の相続税改正は、相続税の大衆化ですからね。課税対象が広がったことで、虫食いがどんどんひどくなる恐れはあります。今の日本の不動産って、かなりの部分が60代から90代の人によって保有されていますから、今後30年間で、その相続が発生すると、それを引き継ぐ側がキャッシュを持っていないと、相続税の負担で厳しい状況に追い込まれるわけです。
それを払えない。物納する。どこかの段階でそれが売りに出てくる。でも人口は減っているから買う人がいない。日本の不動産市場って、これから先を考えると、あまり明るい未来を描けないと思うんです。
中野 それにしても、格差が良いのか悪いのかって、程度問題じゃないですか。格差はすべて悪いというのが昨今の風潮ですけど・・・・・・。
渋澤 格差の存在が悪いのではない。悪いのは、格差の固定化だと思います。格差を広げるのも、逆に縮めるのもイノベーションだと思うし、言うなれば格差が広がったり縮まったりすることは経済活動の呼吸のようなものです。格差が固定化されるというのは、経済活動が息をしていないのと同じことですから、そういう経済がどうなるのか、ということを、もっと考える必要があります。
中野 資本主義を認める以上、ある程度、格差を受け入れることは必要なのではないかと考えます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら