「奨学金400万円」30歳彼女が見た母の預金通帳 「学費を払えば、母と弟の生活は成り立たない」

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日本学生支援機構(JASSO)の奨学金は、進学先の大学が国内でも海外でも、特に問題なく借りられるようだ。

そして、このように日本から「奨学金を借りた」佐藤さんは、同時に韓国から「奨学金をもらう」ことになる。

「韓国の大学に入学が決まった段階で、高校と語学学校の成績や、入試の結果をもとに国からの外国人留学生向けの給付型奨学金を支給してもらえました。さらに、大学が提供している授業料免除もあって、最初の学期(韓国もセメスター制なので半年間)は17万円ぐらいしかかかりませんでした。本来であれば学費も年間70万円はかかりますが、それでも安いですよね。最近では韓国の大学も授業料が上がっているようですが、少なくとも私がいた頃は授業料が年間100万円を超えるような学校はなかったと思います」

しかし、仕送りがない以上、裕福に暮らせるわけではない。そのため、現地ではアルバイトも経験するが、佐藤さんの働き方は一風変わっていた。

「今みたいにインターネットとかもっと普及していれば、国をまたいで在宅ワークもできたと思うのですが、当時は学内の事務室で週に2〜3回数時間程度、雑用みたいなことをやっていました。韓国って学費は安いですが、時給も安いんですよ……。1学期働いても5万円ぐらいにしかならなかったんです。

そこで、日本でアルバイトを重点的にしたんですね。夏休みと冬休みに一時帰国した際に、派遣登録のアルバイトを入れまくって2カ月で35万円ぐらい稼いで、それを次の学期の学費と自分の生活費に充てるようにしていました」

日韓のアルバイトの賃金差を、うまく活用するという作戦である。聞いてる分には面白いが、本人としては必死で生きた結果だったようだ。

「当たり前ですが、奨学金はいずれは返さなければならないわけで、そう考えると散財する気にはなれない。正直、今思うと自分の中で制限をかけすぎていた気もします。脅迫観念というか、『私には借金がある』という思いが強かったですね。

例えば、食費は切り詰められるだけ切り詰めていました。5食で300円のインスタントラーメンを買い込んで、卵と白菜だけ入れて食べる日々です。ただ、韓国は上下関係がかなり厳しくて、先輩が後輩に奢るのが当たり前なんですが、外国人の私も同じようで、しょっちゅう先輩に食事に連れて行ってもらっていました。バイト先の事務所でもよく会食があって、そういうところで食費を浮かせていましたね」

給付型の奨学金をもらっていても、貸与型の奨学金を「借金」と思うことで、メンタルはかなり削られていく。とはいえ、韓国ならではの文化に助けられた面もあったようだ。

奨学金返済が「日系」「外資」選択に影響

4年後、佐藤さんは大学を卒業。大学生活と同様、就職活動も一風変わっている。

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