いきなりステーキと焼肉ライク「明暗」分ける拠所 創業者が社長辞任、進行する肉業界の栄枯盛衰

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加えて、先日発表されて話題になった焼肉のサブスク「焼肉フィットネス」もおひとりさま需要に通じる要素を持っている。これは、3コースの中から個人が好きなコースを選ぶと、それが1日1回食べ放題になるというもので、好きなときに、好きなように焼肉を食べることができる。

まさにおひとりさまの利点を徹底的に活かすように設計されているサービスである。(と同時に、いきなりステーキが確保してきた、ダイエットや筋トレのためにタンパク質を摂取する、いわゆるトレーニーの客層まで貪欲に奪おうとしていることもわかる)

復活のカギはおひとりさま需要の再創出だ

さて、いきなりステーキと焼肉ライクの2つの飲食店を、本稿ではおひとりさまという観点から考えてきた。

双方ともおひとりさま需要を満たす形で店舗を拡大してきたが、いきなりステーキがおひとりさま需要を徹底できず、かと言って家族向けでもない中途半端な姿勢になってしまったのに対し、焼肉ライクはおひとりさま需要を徹底したことで、両社に明確な差が開いてしまったのではないか、というのが筆者の考えだ。(なお、家族向けを強く意識して、急成長を遂げているのが『焼肉きんぐ』である)

もちろん、いきなりステーキ、焼肉ライクともにおひとりさま以外の客も訪れるし、この見方はそれぞれの店舗の特徴をあえて拡大していることはたしかだ。

それでも、南後氏が『ひとり空間の都市論』で指摘したように、接続過剰の現代においてはひとりでなにかを黙々と食べることのできる空間が重宝されるだろうし、その流れは新型コロナウイルスの流行によってさらに加速している。そんな中で徹底したおひとりさま路線をひた走る焼肉ライクに軍配が上がったのはある意味では必然といえる。

そういう意味でも、低迷が続く「いきなり!ステーキ」の復活のカギは、創業当時のおひとりさま路線に回帰することができるのかどうかにかかっているといえるだろう。

谷頭 和希 都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家

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たにがしら・かずき / Kazuki Tanigashira

都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家。1997年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業、早稲田大学教育学術院国語教育専攻修士課程修了。「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾 第三期」に参加し宇川直宏賞を受賞。著作に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』 (集英社新書)、『ブックオフから考える 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』(青弓社)がある。テレビ・動画出演は『ABEMA Prime』『めざまし8』など。

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