いきなりステーキと焼肉ライク「明暗」分ける拠所 創業者が社長辞任、進行する肉業界の栄枯盛衰
どこまで2チェーンが時代の空気感を意識していたかは定かではないが、焼肉ライクに関しては、今日に至るまでこのおひとりさま需要を意識し続けているのは間違いない。
たとえば、今や焼肉ライクの特徴として欠かせなくなっている、パーテーション。これはもともと2020年以降に設置されたものだが、焼肉ライクにマッチしすぎているために、初期からあったシステムだと勘違いしている客も少なくない。
我々がこのパーテーションを見たときに思い浮かべるのは、とんこつラーメンチェーン「一蘭」だろう。
1993年、福岡那の川店を事実上の1号店とするこのラーメン屋は「味集中カウンター」という、他の客とパーテーションで区切られたカウンターを開発して話題を呼んだ。このシステムは特許も取得し、現在も多くの店舗で見られるが、その流れを汲んでいるのが、いきなりステーキや焼肉ライクなのである。
肉マイレージ「改悪」はおひとりさまにどう影響?
しかし、いきなりステーキは、このおひとりさまの価値を徹底しなかった。どういうことか。ここで注目したいのは、経済評論家の鈴木貴博氏が語る理由だ。鈴木氏は、いきなりステーキで採用された「肉マイレージカード」制度の変更がその経営にとってマイナスに働いた可能性を指摘している。
肉マイレージカードは、いきなりステーキが採用している独自のポイントシステムのことで、肉を食べた量に応じてランクがアップし、そのランクに応じたサービスが受けられるというものであった。このシステムについて、日経ビジネスの神田啓晴氏は以下のように述べている。
トップランカーには2トンという猛者もいて、17年前後にブームとなった「肉ダイエット」も追い風に、リピーターに競争心も植え付けるシステムとして人気を集めていた。(「日経ビジネス」2021年5月25日配信「いきなり!ステーキのマイレージ再改変、常連客の「心」は戻るのか」)
これは私自身も経験があるのだが、1人で店に通い、ポイントを貯め続けるという行為はRPGの「レベル上げ」を1人でコツコツ行うことにも通じるストイックさを持ち、そしてどこか求道者的な要素を帯びている。その点においておひとりさまという行為と相性が良いように思われるのだ。
引用で書かれているような「競争心」を満たすのにこのシステムは好都合だったのである。逆に言えば、このようなシステムがあったからこそ、おひとりさまでいきなりステーキに来ても楽しむことができた。
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