いきなりステーキと焼肉ライク「明暗」分ける拠所 創業者が社長辞任、進行する肉業界の栄枯盛衰
2019年1月15日配信のデイリー新潮の記事「『いきなり!ステーキ』と『焼肉ライク』が“代理戦争” その戦場は『幸楽苑』」では、両方の会社とフランチャイズ契約を結んだ幸楽苑ホールディングスを舞台として、この2つの企業の間で戦争が起こっていることが書かれている。この時点では、まだ、両社の対決は決着していなかった。
しかし、実際にこの勝負に勝ったのは焼肉ライクだったようだ。いきなりステーキが次々と焼肉ライクに変わっていることが何よりの証拠である。
では、なにが両社の命運を分けたのか。とくに、いきなりステーキの失速については「出店ペースが早すぎたこと」「牛肉の質を落としたこと」などさまざまな記事で分析されているが、ここでは「おひとりさま」需要という観点から考察したい。
おひとりさま需要を獲得した両チェーン
そもそも、いきなりステーキと焼肉ライクがここまで消費者から愛されるようになった理由は、ステーキや焼肉といった肉料理をおひとりさまでも気軽に食べに行けるようにしたからだ。それまで家族やグループで特別な日に食べるものだったものが、安価に、そして1人でふらりと食べに行けるようになったのである。
いきなりステーキは2013年、銀座4丁目に1号店を出店した。近くには有楽町などのオフィスビルが立ち並び、サラリーマンが1人で食べに行くことも多かっただろう。また、焼肉ライクは2018年、新橋駅前に1号店を出店した。新橋はいわずと知れたサラリーマンの聖地であり、ターゲットは30~40代のサラリーマンと明確に決められた。両方とも、開業当時は行列ができるほど人気を博したという。
さて、このようにおひとりさま客を取り入れることで成長した2チェーンだが、そこには時代的な需要もあると考えられる。社会学者の南後由和氏は『ひとり空間の都市論』で、ネット空間の発達によって人とのつながりが過度に増えた結果、そこから逃避するために現代ではおひとりさま空間への希求が高まっていると指摘している。その例として挙げられるのが「ヒトカラ(1人でカラオケをすること)」。いわば、コミュニケーション過多の現代における一種の避難場所として、こうした空間が捉えられているのだ。
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