ANAとJAL「日本で乗り継ぐ外国人」で稼ぐ懐事情 海外の航空会社は国際線の供給量回復に苦戦
従来、両社の稼ぎ頭だった日本と目的地の直行便は、相手国の航空会社とANA、JAL程度しか競合がいなかった。
しかし、三国間流動に関しては、コロナ前は両国の航空会社に加え、中東のカタールやエミレーツ、香港のキャセイパシフィック、中国本土の三大航空、台湾系などライバルが多く、競争が熾烈な市場だ。ただ、この競争環境がコロナの影響で一時的に緩やかになったのが、ANAとJALにとって追い風となった。
ライバルは国際線の供給をなかなか戻せない
例えば中国の三大航空キャリアである、中国国際、中国東方、中国南方や香港のキャセイパシフィックは、水際対策の影響で国際線の供給を戻すことができていない。
キャセイパシフィックの月次実績を見ると、2022年6月の旅客は、15万人と、前年同月と比較すると2倍以上になっているが、コロナ前の2019年6月と比較すると、20分の1でしかない。
タイ国際航空など一部の航空会社は経営難に陥ったためリストラを行い、便数を減少させている。
今後に目を転じても、ANAとJALは三国間流動においてしばらくは優位に旅客を獲得できるだろう。
中国系航空の多くはしばらく国際線の供給を戻すことは見込みにくい。中国はゼロコロナ政策を堅持し、海外渡航の制限はもちろん、国内で小規模なロックダウンなど行動制限が繰り返されている。業界関係者の多くは、「2022年秋までは、今の状況が続くのではないか」と推測している。
加えて、渡航制限が解除されたとしても、すぐに供給量を戻すことは難しそうだ。例えば、キャセイパシフィックは、コロナ禍で大胆なリストラを行っており、パイロット不足が懸念される。現地報道によれば、2023年末までに700人パイロットを採用する方針を明らかにしている。
日本は入国者の制限は行っているが、乗り継ぎなど三国間流動については規制を設けていない。ANAとJALは、コロナ禍において新規採用の停止、ANAはリストラを行ったものの、規模は限定的だった。一定の雇用を維持したことが機動的な復便につながった。
ただ、今後は、水際対策の緩和に合わせて、直行便の旅客も獲得していくことも求められる。
ビザや陰性証明書の取得などで、海外への渡航や訪日需要が落ち込んでいる今、三国間流動の旅客を獲得する戦略は理にかなっている。だが、国際線を下支えしている三国間流動は、直行便と比べると不便であることに加えて競争も激しく、単価の低い傾向にある。
現在、水際対策として入国者数制限のほか、訪日外国人にはビザ取得や添乗員付きパッケージツアー参加での入国が求められている。日本人の海外渡航では帰国時のPCR検査が必要で、往来の足かせとなっている。
そこで、「入国前の陰性証明書撤廃、訪日観光客の個人旅行での入国、訪日ビザの免除措置の再開を国にお願いしている」とANAの中堀氏は決算会見で明かした。
ANAとJALは、3年ぶりの営業黒字を会社計画として掲げているが、足元で国内は新型コロナが拡大し、旅客の回復は想定より遅れている。それだけに、国際線が2022年度の浮沈のカギを握る存在となりそうだ。
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