ANAとJAL「日本で乗り継ぐ外国人」で稼ぐ懐事情 海外の航空会社は国際線の供給量回復に苦戦

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2022年の4~6月時点で、ANAの国際線に占める三国間流動の割合は5割、JALは3割となっている。国際線自体が低迷する中でも、三国間流動の旅客数はANAがコロナ前と比べて横ばい、JALに至ってはわずかに増加しているという。

両社が三国間流動の需要を獲得できた要因は大きく分けて2つある。1つ目が路線戦略だ。

各国政府が新型コロナ感染防止を目的とした海外渡航制限を講じると、国際線の利用頻度は激減した。実際、ANAとJALも国際線の減便を進め、1年前の2021年8月ごろの運航率は、ANAは2020年度事業計画比で19%、JALは同25%だった。

ANAとJALは需要に応じて復便を進めた

しかしその後、状況が一変する。三国間流動の需要が大きく回復し始めたのだ。「2021年11月8日にアメリカが水際対策を緩和したことが(三国間流動の需要拡大などにおいて)非常に大きかった」、ANAで国内線と国際線の運賃戦略を策定する宮川弘之氏は語る。

とくに三国間流動の旅客が多いのは、東南アジアと欧米を結ぶ航路だ。移民が多いアメリカにコミュニティがあるフィリピン、ベトナム、インドネシアなどは、もともと往来する旅客が多かった。

さらに、アメリカと東南アジアは渡航制限の緩和が早く、コロナ禍で制限されていた帰省をする旅客が増えているのだ。

こうした需要に対応するためANAは、アメリカや東南アジア方面の路線を中心に復便を進めている。8月時点での運航率は、37%と前年同月から2倍になった。

対するJALは、三国間流動への対応はANAから一歩遅れていた。JALでアメリカ大陸と東南アジア路線の収支管理を担当するレベニューマネジメント推進部の丸山洋平グループ長は「2020年のゴールデンウィークの海外旅客数で大きな差がついたことが、三国間流動を強化するきっかけとなった」と打ち明ける。

確かに、コロナ禍直撃から間もない2020年GWの旅客数の実績を比較すると、ANAは6591人だったのに対し、JALは2030人と3分の1以下にとどまっている。

これを受け、JALはアジア便の多い成田空港の乗り継ぎ利便性を高めるため、東南アジア便を2020年11月に増便した。成田空港を起点として三国間流動の需要を獲得することに成功している。

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