「事実と意見を混同する人」がなんとも危うい理由 ただの個人的意見を「根拠」にしてしまっている

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京都大学で宇宙物理学を研究する嶺重慎教授が面白いことを語っています。近年の天文学の画期的な業績に、太陽系外惑星の発見があります。この業績により、スイス・ジュネーブ大学のミシェル・マイヨールらにノーベル物理学賞(2019年)が贈られました。

ほんの30年くらい前まで、天文学者たちは太陽系外の惑星など見つかりっこないと考えていました。しかし、マイヨールが「惑星が見つかったら面白いなあ」と妄想し、観測したところ、太陽系とはまったく異なる惑星の存在を発見しました。

度肝を抜かれたほかの研究者たちがそのあとを追って研究を行った結果、今では約5000個もの惑星が見つかっています。しかも、面白いことに、惑星の発見はマイヨールにとってメインの研究ではなく、サイドワークだったというのです。

嶺重教授は、これらのエピソードをもとに、研究者にとって重要なのは妄想する力であるといいます。科学の世界だけでなく、ビジネスの現場でも「こんなものがあったらいいな」という妄想を起点にして調べを進めていった結果、イノベーションの種が見つかることもあります。何事も「どうせ駄目」「調べる価値なし」などと決め付けてはいけません。

自分の間違いに気づいたら、すぐに調べて訂正する

思い入れや願望、妄想から発想や行動をスタートすると、調べることへのモチベーションが高まります。自分の正しさを証明するために全力で頑張ることができるのです。

一方で、思い込みの情報が間違いだとわかるケースも当然あります。
私は、かつて著書で『徒然草』について記述した際、著者を「吉田兼好」と表記したところ、出版社から間違いではないかと指摘された経験があります。

確かに「吉田兼好」と学んだ記憶があったので「そんなはずはない」と思い、自分で調べてみました。すると、近年の研究では吉田姓は後世になってから普及した通称であり、吉田とするのは間違いであるという説が主流になっていると知りました。現在の中学校の教科書には「兼好法師」と記述され、「吉田兼好」では若い人はピンとこないのです。

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