意外な盲点「根拠ある健康情報」も実は疑うべき訳 お茶のカテキン「血管の病気を防ぐ」は本当?

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もっと詳しくいえば、比較するときの方法も大事で、一番信頼性が高いのは、二重盲検無作為化比較試験です。お茶を飲む人と水を飲む人をランダムに分けて、なおかつ、お茶を飲んでいるのか水を飲んでいるのかをわからないようにしたうえで比較する。

そうやって比較するのがベストな方法ですが、ただ、一般の人が1つひとつの情報に対してそこまで見極めるのは難しいと思います。ですから、まずはシンプルに「十分な人数(最低数百人以上)の人を対象とした研究で比較されているかどうか」を意識していただければ十分です。

「玉ねぎが血管に良い」という情報(あくまでもたとえです)があったとして、誰から聞いたか、どんな場面で聞いたかによっても、印象は変わるのではないでしょうか。

例えば、次の2つのパターンであれば、どちらのほうが信頼できると思いますか。

・友人から「玉ねぎを1週間毎日食べたら血圧が下がった」という話を聞いた
・テレビ番組で、有名大学の教授が「玉ねぎは血管の健康にいい」とすすめていた

前者のほうは、身近な友人の話なので情報が細かく、物語を伴って入ってきます。そうすると、臨場感があるので「いいのかも」と思うのではないでしょうか。一方、後者のほうは、「有名大学の教授が『いい』というのだから良いのだろう」と思うかもしれません。

ところが、どちらもエビデンスレベル(科学的根拠の信頼度)という意味では高くありません。むしろ、非常に低い。「どちらのほうが信頼できるか?」と聞きましたが、実はどちらも信頼性は低いのです。

まず、前者の「友人から~」のほうは、どんなに身近な友人であっても、一人の方の感想です。それが本当に科学的に正しいのかどうかはさっぱり不明で、同じことを例えば3000人が行って、同じ結果が出るかは、まったくわかりません。一方で、後者の「大学の教授が~」のほうも、エビデンスレベルとしては低いのです。

専門家の意見や考えもエビデンスレベルは最低

少し専門的になりますが、エビデンスレベルとは、推奨されていることがどの程度信頼できる科学的根拠に基づいているのかを示す指標のことで、6つの段階があります。

このうち、専門家の意見や考えは、その人がどんなに有名な大学の教授や専門医であったとしても、エビデンスレベルは「6」。一番低いのです。

出所:『健康寿命を延ばす「選択」 “見える化”すれば、“合理的に”選べる』

テレビや雑誌でのコメントのほか、「○○教授監修」といった商品もよくあります。一般の方は「専門家の先生が監修しているなら、いいんだろう」と思うかもしれませんが、それだけでは科学的な裏づけがあるかどうかまではわかりません。

科学的な裏づけがある場合もあれば、企業からお金をもらって監修を行っているわけですから、「リスクのあるものではないし、理論的にはよさそう」というだけで「よい」といっているのかもしれません。

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