児童相談所職員と虐待親の世に知られていない姿 短編映画「ほどけそうな、息」が伝えるリアル
千葉県内の元児童相談所の職員が7月、長時間労働でうつになり退職せざるをえなくなったとして、児相を所管する同県に慰謝料などを求める訴訟を起こした。職員の忙しさや人手不足が報じられる一方、虐待で子どもの命が奪われるたびに「児相は何をしていたんだ」という批判の声も巻き起こる。しかし実際に「何をしていた」かは、守秘義務の壁もあり、外からは見えづらい。
そんな「児相のリアル」を伝えようとしたのが、短編映画「ほどけそうな、息」の監督・脚本を務めた小澤雅人さんだ。小澤さんと、映画制作に協力した現場の職員たちに、児相職員や「加害」親の抱える苦悩について聞いた。
職後3年で9割が職場を去る 心折れる若手職員
小澤さんは「児相は虐待事件が起きるたびに悪者扱いされてきたものの、内情はあまり知られていません。職員たちが、どのような思いで親子と向き合っているかを伝えようと考えました」と、制作の動機を語る。
映画の主人公、カスミは、児相に入職して2年目の若手職員だ。小澤さんは制作にあたり、児相で働く何人もの若手・中堅職員に話を聞いた。最も驚かされたのは、若手の離職率の高さだという。
職員たちは口々に「同期の9割が入職1~3年で、離職するか異動する」「20代半ばまで残れば『中堅』扱い」「10年勤務できる人はかなりまれ」と語った。
原因の1つは忙しさや長時間労働で、「昼食も満足に取れない日がある」という訴えは、職員に共通していた。保護した子どもたちが滞在する、一時保護所の運営も職員の仕事だ。報道によれば千葉県を提訴した元職員は、一時保護所の宿直中、個室で仮眠も取れなかったと訴えている。映画の中でも、カスミのデート中に仕事の電話が鳴り、深夜に残業するなどの忙しさが描かれている。
ただ離職の最も大きな要因は、忙しさよりも精神的な負担の大きさではないかと、小澤さんは推測する。
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