児童相談所職員と虐待親の世に知られていない姿 短編映画「ほどけそうな、息」が伝えるリアル

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ただ加害親は決して、理解不能な「モンスター」ではないとも、川上さんは強調する。多くは社会へのゆがんだ認識や、過去に受けた暴力のトラウマ、貧困などによって「人生がうまくいかない」という生きづらさを抱えているのに、他人を頼れない人たちなのだ。

「SOSを出せない親御さんに『お困りですよね』と声をかけ、抱える問題の解消を手助けするのが、私たち児相職員の仕事です」と、川上さんは話す。

映画にも飲酒の問題を抱える母、シノブが登場する。カスミらが家を訪れると、シノブはごみの散乱する部屋で酒を飲み、カスミたちにも反抗的な態度を示す。

外から見れば、シノブは子どもがいるのに掃除1つできず、酒も断てない「鬼母」かもしれない。しかし監督の小澤さんは「母親を悪者扱いするつもりは最初からなく、困りごとを抱えた人として描こうと考えていた」と言う。

加害の母親も苦しんでいる

小澤さんは過去にも児童虐待や性暴力などを、作品のテーマに取り上げてきた。数年前からは、川上さんらが開く勉強会などにも参加し、虐待についての学びも深めた。その中で「加害の母親も苦しんでいる。児相の介入で苦しみが和らげば、子どもとの関係も明るい方へ進み始めるはずだ」と考えるようになったからだ。

また小澤さんは「本来は父親たる男性の責任にも、目を向けるべきだ」とも訴えた。

「子どもに手を上げる母親の陰には、孤立した育児を押し付ける父親の存在があるかもしれない。もし子どもが死んだら、彼らは被害者として振る舞う可能性すらあります。映画を見た人には、表面的な『虐待事件』報道の裏に何があるのかも、考えてみてほしい」

「ほどけそうな、息」は、9月3日から都内の映画館「ポレポレ東中野」を皮切りに、随時上映される予定だ。

有馬 知子 フリージャーナリスト

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ありま ともこ / Tomoko Arima

共同通信社を経て2018年独立。取材テーマはひきこもり、児童虐待、性暴力被害や多様な働き方など。

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