研究者・棋士・エンジニアの顔を持つ28歳の生き方 「それぞれ全力を注げるからバランスがとれる」

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将棋に夢中で、学校の勉強はほとんどしていなかったというが、高2でふと思い立って本腰を入れると成績が急上昇。勉強の面白さに開眼し、現役で東大に合格する。

「当時はちょうど『将棋AIが人間に勝つか負けるか』と盛り上がっていた頃。それなら将棋界に身を置く者として、プログラミングも学んでおきたいと思い、工学部へ進みました」

現在は、大学院の博士課程で「AI研究者」という2足目のわらじを履いている。研究テーマは、将棋ではなく「フォークリフトの運転支援」についてだという。

「好きなものが多いから、いろんなテーマに手を出しちゃうんですよ」(写真:エンジニアtype)

3足目のわらじである「エンジニア」としての活動は、2019年に本格スタートした。

きっかけはスタートアップ企業からのスカウト

自動車技術会主催のシミュレーション競技「第一回自動運転AIチャレンジ 」に参加して優勝したのを機に、自動運転業界のスタートアップ企業ティアフォーからスカウトされ、エンジニアとして働き始めたのだ。

「スタートアップでは研究に近い開発をしていたので、働いている感覚はあまりなかったし、いろいろな人との出会いもあって、とにかく面白かったですね」

その後、2020年には棋士としてプロ入りを果たし、本格的な3足のわらじ生活がスタートする。

「最近は、個人的にやっていた将棋AIの開発にもっと時間を割きたいと思うようになり、2022年3月にティアフォーを退社しました。なのでエンジニアとしての活動は、今は『将棋AIの開発』がメインですね」

将棋AIへの造詣は深く、月刊誌『将棋世界』では、藤井聡太五冠の将棋をAIを利用して徹底的に分析する連載を担当していたほど。

2021年末には、全13局の解説をまとめた書籍『AI解析から読み解く 藤井聡太の選択』(マイナビ出版)も発売された。

「人間の指し手と将棋AIの読み筋って、結構違うんですよ。AI的に見たら悪手でも、人間の思考プロセスでは自然なこともある。連載では対局者の思考を丁寧にトレースすることを心掛けました」

次ページ連載当初は、プロ棋士一年目
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