――とはいえ、「それって笑って済ませていい話かな?」と踏み込まないことにはケアに繋げられない場面もあるかと思います。
それは本当にそうですね。
――この連載の第1回で取材したハラスメント被害者支援NPOの代表・今野晴貴さんも、「支援窓口に来る前の段階には介入できない」「周囲の人が追い込まれているサインに気づいたら、支援窓口へ向かう背中を押してあげてほしい」とおっしゃっていました。
そうですね。私も他人が自分のように笑い話として話していたら、それはやっぱり気になります。実際、友達にパワハラに関する相談を笑い話のような態度でされた時は、自分がそうしてしまいがちだからこそ、「それって笑って聞いていい話? 無理に笑い話にしなくてもいいんだよ?」って伝えていますね。ときには踏み込むことも必要だし、それができる人にしか獲得できない信頼はあると思います。
ハラスメント被害者へのケア認知拡大に向けて
――ここまで過去の自分を振り返って、どのようなことを思いますか?
そうですね……過去の自分に対して、どういう言葉をかけてあげればいいかわからないですね。
私自身、上司が意図的にパワハラしていたと知るまで、ハラスメントだとちゃんと認識できていない部分があったので、当時の自分に「あなたはハラスメントを受けている」という前提で話したとしても噛み合わなかったかもしれません。
それに、今でもそういうシリアスな話をシリアスなまま友達に伝えるのは苦手だと思います。話すことはできるけど、「相談」っていう感じにできないというか。
――当時、ご家族には話されていましたか?
はい。親は心配してくれていたんですけど、転職を促されるのがつらくて。転職活動をして、今より条件のいい会社に行けるとも限りませんし、その気後れが本当に大きな壁になっていました。
親以外にも、この人は「辞めちゃいなよ」って言ってきそうだなと思う友達には仕事の話ができませんでしたね。
――今、自分が置かれている環境がまともでないことは自分でもよくわかっている、だからといって変化に迷いなく踏み出せるわけではない、と。
働いてる自分が一番よくわかってるんですよね、いい環境じゃないっていうのは。ただ、そうは言っても転職のことを考える気持ちの余裕がないし、すべてを失ってしまうんじゃないかっていう恐怖をないことにはできない。
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