あとは睡眠の問題。まず、在職時は毎日2~3時間しか眠れていませんでした。私はもともとストレスが睡眠に影響しやすい体質で、だから職場のストレスだけが原因だったとは思わないですが、それでも普通に眠れるようになるまで、退職してから半年から1年ぐらいかかりました。
でも、そういう話で言うと、私はけっこう当時の記憶が飛んでいるというか、曖昧な部分が多いんですよ。さっきお話ししたことはあまりにも極端なエピソードなので覚えていましたけど、逆にこれまでに話したこと以外だとあんまり思い出せなくて。
――これまでの聞き取りでも、記憶が鮮明でなかったり、主観的に歪曲しているかもと負い目に感じたりして、被害体験が語られにくい状況はありました。長時間労働のせいで朦朧としていて記憶が定かでないというケースもあります。
あとは、私はパワハラによって病名がつくようなレベルで体調を崩したり、通院したりということはないので、少し気が引けるところがあります。だから今回の取材でも「私レベルでも話していいのかな?」という思いはあるんです。
――本連載はパワハラによる心身へのダメージを主軸にしていますが、扱うのは疾患として顕在化しているケースに限定しないことにしています。具体的な症状として表れていないからといって、傷ついた度合いが「大したことない」わけではないという観点を大事にしたいからです。
でも、それもそうですよね。同じだけのダメージを受けても、いろんな要素が複合的に関係しあって、結果としての反応はそれぞれになりますよね。
パワハラ中、自分を守るためにしていたこと
――では、パワハラを受けていた時期、何か自分のケアのためにしていたことはありましたか。
友達に話してはいましたね。でも、それ以外で特に何かしていたというわけではなかったと思います。
――ハラスメントを受けていることを周囲に相談できず孤立してしまうケースは多いですが、ゆりなさんはそうではなかったと。
はい、友達付き合いは好きですし、家族仲もいいです。もともとなんでもおもしろおかしく受け止める性格なので、当時の職場で自分に降り掛かっていたいろんなことを「おもしろ話」として話していましたね。
私はつらいことをそのままつらいこととして話すのが苦手で、「これは笑い話として話せるな」と思ったら人に言う、そうでなければ言わないで済ませてしまうことが多いと思います。笑ってほしいと思って話すと友達が笑って聞いてくれたので、当時はひとりで抱え込んでいるという気持ちはなかったですね。
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