医者でさえ「7割が生活習慣病」に陥る科学的理由 「糖」は脳にとって特別で中毒性が非常に高い

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ただし、普通のエサの場合、毎日同じものを食べているうちに飽きてきて、ドーパミンの量は明らかに減っていきます。脳にとってハッピーではなくなり、「もういいや」という感じになるのです。

ところが、砂糖の場合は、ずっと変わらず脳の報酬系を刺激し続けます。3週間経っても脳が砂糖に飽きることはなく、ハッピーなまま、ドーパミンが出続けます。だから、砂糖を食べる量は日に日に増えていくのです。それだけ糖質というのは脳にとって特別で、中毒性が非常に高いものです。

出所:『健康寿命を延ばす「選択」』

(外部配信先では図や画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

糖質や脂肪をつい食べ過ぎるのは生理的な現象

私たちも物心がついたときから今まで、朝・昼・晩と1日3回ごはんを食べますよね。それでも飽きません。これが3食ブロッコリーだったらどうでしょう? すぐに飽きてしまいそうです。こうしたことに疑問を感じたことさえないのではないでしょうか。

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糖というのは食べ続けても、いつ食べても脳がハッピーを感じるようにできているのです。同じような結果が、肉類や乳製品といった動物性の脂肪に関しても出ています。糖質や脂肪をつい食べすぎてしまう、よくないとわかってはいてもやめられないのは、科学的な根拠があるのです。ある意味、生理的な現象なのです。

糖質や脂肪の多い“おいしい食事”は脳を味方につけてしまうほどの強敵なので、食べすぎないようにするには、「これを食べすぎたらどうなるのか」「こういう食事を毎日選んでいたらどうなるのか」をしっかりと理解して、生理的な欲望を、合理的に、理性で抑制するしかありません。

このときに、健康に対する知識のある医者でも合理的に理性で抑制できていないことを考えると、プラスアルファのちょっとした工夫が必要です。それは、私は「見える化」だと思っています。

浅野 拓 聖路加国際病院・心血管センター 循環器内科医

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あさの たく / Taku Asano

日本内科学会専門医、日本循環器学会循環器専門医、日本循環器学会関東甲信越支部予防委員会委員。1979年生まれ。2006年3月浜松医科大学医学部卒業後、聖路加国際病院の初期臨床研修を開始。心血管センターにて主に冠動脈疾患や弁膜症の診療に従事し、これまで術者として500人以上のカテーテル治療に当たる。LancetやThe New England Journal of Medicineなどの主要医学雑誌をはじめとした70編以上の英語医学論文の作成に関わり、国際学会での講演や発表も精力的に行う。2020年アムステルダム大学(University of Amsterdam)にて博士号取得。

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