医者でさえ「7割が生活習慣病」に陥る科学的理由 「糖」は脳にとって特別で中毒性が非常に高い
医者をはじめ、合理的な選択は何かということはわかっていても、行動に移せないのはなぜかというと、前述の行動経済学が解き明かすような心理的な側面からだけではなく、じつは脳の「報酬系」というシステムが邪魔をしています。
報酬系は、薬物依存やアルコール依存、ニコチン(タバコ)依存といった依存症にもかかわっている神経回路です。
麻薬や覚せい剤といった薬物、アルコール、タバコなどの快楽を感じる物質が入ってくると、脳内でドーパミンという神経伝達物質が次々と分泌されて、脳の側坐核という部分が刺激されて高揚感が高まるとともに、前頭前野では「またこの快感が欲しい!」という衝動的な気持ちが強められるのです。このように、快楽物質とも呼ばれるドーパミンを分泌する脳内の神経回路が報酬系なのです。
つまり、薬物やお酒、タバコといった刺激によって脳の報酬系が活性化されて、ドーパミンがどんどん出ると、脳が心地よさを感じて「もっと、もっと!」とさらに欲しがってしまうわけです。
糖質や脂肪の多い食事は脳の報酬系を刺激しやすい
同じようなことが、食事でも起こります。とくに、ごはんやパン、めん類といった主食や甘いものなどの「糖質」や、「脂肪」の多い食事は、脳の報酬系を刺激しやすい。そのため、中毒性(依存性)があることが証明されています。
甘いものや脂肪(動物性の脂肪)の多いものはおいしいですよね。レストランのメニューにあれば、つい食べたくなってしまいます。そして、食べはじめると止まらなくなることも。その先の健康ということを考えると合理的な選択ではありませんが、それは、私たちの脳がうっかり喜んでしまっているからなのです。
ラットを用いたある実験では、砂糖(スクロース)を与え続けると、日に日にラットの食べる量が増えていくことがわかっています。ブレーキが利かないわけです。「やめられない、止まらない」という状態ですね。どうして止まらないのかと言えば、脳が飽きないからです。
脳内の報酬系が刺激されると、快感や興奮につながるドーパミンという脳内ホルモンが出るわけですが、ラットに普通のエサであるペレット(各栄養素がバランスよく入っているようなもの)を与えたときにもドーパミンは出ます。「やったー、ごはんがきた!」と、脳が喜ぶのです。
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