米紙「安倍氏は戦後日本で最も変革的な政治家」 政治的地殻変動なくても影響力は永久的に続く
安倍氏の強硬路線は時に日本で抗議デモや平和集会を引き起こしたが、少なくとも現時点では、これが殺害の動機ではないと見なされている。また、今回の殺害は1930年代にニューヨークタイムズの東京支局長であったヒュー・バイアス氏が、激動の時代をつづった回想録のタイトル、「Government by Assassination(暗殺による政府)」の時代への逆戻りを意味しているわけでもない。
バイアス氏は日本でこれ以前に現職、または元首相が殺害された時の様子を綴っている。犬養毅首相は1932年、大日本帝国海軍の将校たちによる反乱の一環として殺害されたが、この企図は真珠湾攻撃から9年前に、対アメリカ開戦を引き起こすべく行われたものと考えられた。
戦後の日本では、政治的暗殺はまれであった。1960年には社会党党首が刺殺され、また2007年には長崎市長が銃撃を受けて死亡しているが、これは個人的な争いがもとだと見られている。
さらに1960年代アメリカの駐日大使であったエドウィン・O・ライシャワー氏が19歳の日本人男性により太腿を刺されるという事件があったが、命に別状はなく、同氏はハーバード大学の日本政治の筆頭研究者として復帰した。
政治的な地殻変動は起こらない
安倍氏の死により、自由民主党の最大派閥の次のリーダーの座をめぐって競争が始まるだろう。また、その衝撃は、ジョー・バイデン大統領が8日CIA訪問時に述べたように、「日本人の心に大きな影響を与えるだろう」。
だが、今回の事件が政治的な地殻変動をもたらす可能性はほとんどない。安倍氏は健康問題もあって2年前に首相の職を去っており、中国の習近平国家主席や、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領など、現在の世界の指導者たちに互するほどの力は持っていなかった。1990年代の屈辱的な不況により、日本の超大国としての立場は大きく損なわれている。
しかし、安倍氏の影響力は、永続的なものだと識者たちは語る。