「日本語ラップはダサい」に学術的に終止符を打つ 日本語ラッパーは言語学的感性に優れた人々だ

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日本語ラップはダサい、という主張に真っ向から対抗する!(写真:TY/PIXTA)
「日本語ラップはダサい」。2005年ごろネットでこうした議論が盛り上がったことをご存知だろうか。曰く「日本語はラップに向いていない」。英語の母音はたくさんあるけど、日本語の母音は5つしかない。しかも、英語は子音で終わる単語がたくさんあるけど、日本語にはそのような単語がないーーというのが、こういう主張をしていた人の言語学的な言い分だ。
これに真っ向から挑んだのが、ドラクエ、ポケモン、メイド喫茶など、あらゆるテーマを対象に言語学的な分析を行い、反響を呼んでいる気鋭の若手学者、川原繁人氏である。新著『フリースタイル言語学』より、日本語ラップに惚れ込んだ筆者が「日本語ラップはダサい」という議論に学術的に対抗する。

人生を変えたZeebra、ライムスター

すべての始まりは、大学生の時に幼馴染みがくれた1本のミックステープであった。彼とは幼稚園時代からの幼馴染み。大学に入って学問一筋になった私に対して、デザインや音楽の道に進んだ彼。お互いまったく別の世界に住んでいたからこそ、仲が良かった。

そんなDJを目指していた彼が、お薦めの日本語ラップの曲を見繕ってくれたのである。その中には、KICK THE CAN CREWの『イツナロウバ』や、DJ Hasebe feat. Zeebra/Mummy-Dの『MASTERMIND』、DJ Tonk feat. 宇多丸の『バースデイ』なんかが入っていた。もともと言葉あそびが大好きだった私は、日本語ラップにすぐにはまり、大学の行き帰りにずっと聞いていた時期がある。

日本語ラップを聴きながら通学していると、私の悪い癖が出た。そう、分析を始めてしまったのだ。最初は些細な観察だった。なるほど、日本語の韻っていうのは、最後の母音を合わせるだけじゃなくて、単語内の母音を全部合わせたりするのか。

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