「人口減」をむしろ味方につける経済大改革の方策 もはや昭和ではない、「同棲婚」「婚外子」も鍵に

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縮小

ここで強調したいのは、人口が減るから公共サービスや道路・橋などインフラの維持を減らせといったネガティブな話ではない。人口減少は放っておけば、従来のように国内市場の縮小などの縮み思考につながり、需要不足気味の「デフレ経済」を長期化させる。

しかし、人口減少は労働力の減少や希少化を意味することも忘れてはならない。これは、やりようによっては欧米のように賃金と物価が一緒に上がる社会へシフトさせる好機になりうる。

例えば、政府が進める勤労者皆保険。短時間労働者への厚生年金適用拡大を進め、現在ではフリーランスやギグワーカーへもその網を広げようという議論が始まっている。

これは、企業にとって社会保険料負担が発生することを意味し、多くの経営者はネガティブに捉えている。しかし、このコストアップは希少な労働力に必要とされる付加価値という側面もある。最低賃金の引き上げや人材への投資・教育も同様の意味を持つ。

健康寿命の延びに応じた高齢期の就業や、子育て期を含めたフレキシブルな働き方に対して処遇改善を行うことも同じだ。

企業がこうしたコストアップを製品・サービスへ価格転嫁し、社会がこれを積極的に受け入れていけば、個人の所得環境は好転し、社会保障の充実により生活や将来への不安も軽減される。結果、需要主導型の経済活性化が期待でき、人口減少期の経済成長を底上げする重要な方策になる。

財源論を展開してこそ、責任のある政治だ

もちろん、きれい事ばかりではない。社会を変えるためには財源も必要になる。先進国の中で劣後する日本の子育て支援を増やすためには、税や社会保険料などの財源論を同時に進め、マイナンバー制度やデジタルの活用により、課税や給付の仕組みを効率化することが重要だ。

目下の参院選でそうした財源論を展開する政党は僅少だが、それを行ってこそ、責任ある政治といえるのではないか。

野村 明弘 東洋経済 解説部コラムニスト

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のむら あきひろ / Akihiro Nomura

編集局解説部長。日本経済や財政・年金・社会保障、金融政策を中心に担当。業界担当記者としては、通信・ITや自動車、金融などの担当を歴任。経済学や道徳哲学の勉強が好きで、イギリスのケンブリッジ経済学派を中心に古典を読みあさってきた。『週刊東洋経済』編集部時代には「行動経済学」「不確実性の経済学」「ピケティ完全理解」などの特集を執筆した。

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