バブルが崩壊したとはいえ、今思えば私がいた頃はまだ、水商売の世界も元気でした。でも、リーマンショック後に一気に不安定になり、今回のコロナで多くの人が辞めざるを得なくなって。
そういう人たちがたどり着いたのは介護士です。決して介護士という職業を低く見ているわけじゃなくて、みんな学歴がないから選択肢がないんですよ」
安易な「中退美学」にも警鐘
だからこそ、「学歴」についても「持てるものなら持っておいたほうがいい」ときっぱり話す。
「甥っ子(姉の息子)が早稲田大学の出身なんですが、大学に馴染めずに中退したいって言い出したことがあるんです。その時は私も姉と一緒に『絶対やめとき!』って反対したんですけど、どうも早稲田には中退美学みたいなものがあるそうで。『中退一流、留年二流、卒業三流』って彼は言ってたんですよね。
たしかに、芸能界やビジネスの世界では大学や高校を中退して大活躍してる人もいますけど、そんなの割合的にはごく一部だと思うし、『中退=格好いい』と考えて中退するのであれば、そんなん全然格好良くないから、それを理由にするならやめたほうがいいと思います。
だいたい、そこまで来るために、あんたの親がどれだけのお金と気持ちを注いできたんやって思いますしね。まあこれも、親になるまで私もわからないことやったんですけど……」
姫野さんも加わった猛反対の結果、甥っ子はなんとか早大を卒業したそうだが、自分自身に中退経験があることもあってか、その眼差しは厳しくも優しい。
「中退を考えてる人って、焦ってると思うんですよ。私自身、実家が貧乏だったことが影響して、お金を稼げるようになりたい、ひとりで生きていけるようになりたいって気持ちが強くて、高校中退に繋がりましたからね。
でも、私が伝えたいのは『慌てることはないんやないかな?』ってことで。たとえば、大学生の中には『留年したけど、年下と一緒に勉強するのが恥ずかしいから中退する』って考えてしまう子が多いと思うんですけど、でも、社会に出たら1歳違いなんて何でもないわけで。
それこそ、1個下の子と付き合ったり、結婚したりするわけじゃないですか。そう考えたら、何も恥ずかしいことはないから、その1~2年を頑張れないのはもったいないと思うんです。とくに今は、人生100年時代ですからね」
と同時に、彼女の優しい眼差しは、愛する我が子にも向けられている。
「自分の子供には『難関大学じゃなくてもいいから、大学は出ておきなさい。そして、思う存分遊びなさい』と話してるんです。自分自身が早くから働いてきたぶん、すねをかじらせてあげたいんですよね」
中退というと、どうしても「人生を真面目に考えてない人の行動」と思われがちだが、実は逆で、真面目に考えるからこそ、生き急いだ結果、中退したくなる人も少なくないのではないか。
そんなことを思うと同時に、実力社会で成功を収めた姫野さんのような人からも、中退したことへの「後悔」の数々が語られるのを聞いていると、ときに誰かが高らかに謳う「学歴なんて関係ない」という言葉について深く考えさせられた筆者であった。
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