17世紀のオランダの画家、ヨハネス・フェルメール(1632~1675年)は、日本でも人気の高いバロック絵画の巨匠のひとりだが、現存する作品は三十数点しかない。代表作『真珠の耳飾りの少女』や『牛乳を注ぐ女』などで彼が用いた暗い場所でも映える鮮やかな青は「フェルメール・ブルー」と呼ばれている。
2008年に登場した小田急電鉄のロマンスカー60000形「MSE」は、そのフェルメール・ブルーを全身にまとった流線形のデザインが独創的だ。側面の窓の下に走るバーミリオン・オレンジの帯がロマンスカーの伝統カラーを引き継いでいる。
マルチな才能を発揮する
MSEのMは「Multi(マルチ)」を表す。その名の通り、多目的運用で本領を発揮する。最大の特徴は東京メトロ千代田線とJR御殿場線といった他社線への乗り入れだ。デビューしたのは2008年3月15日。小田急が営団地下鉄(現・東京メトロ)と通勤電車の相互直通運転を開始した1978年から30年後のことだった。地下鉄に座席指定の有料特急が乗り入れるのは日本初とあって話題を呼んだ。
従来のロマンスカーの新宿―箱根湯本・片瀬江ノ島間のルートに加え、東京メトロ千代田線の北千住から大手町、霞ケ関、表参道と地下鉄線内を経て小田急線に直通する運用に道を開いた。2012年3月のダイヤ改正以降はそれまで小田急20000形「RSE」・JR東海「371系」が充てられていたJR御殿場線直通の特急「あさぎり」(現・特急「ふじさん」)の運用も担うことになった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら