「ロマンスカーじゃない」と駅で子供が泣いた――。このような“不名誉”なエピソードが付きまとう小田急の特急用車両がある。
1996年にデビューした30000形「EXE」。箱根特急として観光客を運ぶだけでなく、ビジネス需要にも対応する期待を背負い誕生した車両だったが、ロマンスカー最大のセールスポイントである「展望席」がないことなどから、子供たちには不人気だったようだ。
その後、世界的に活躍する外部デザイナーを起用して、展望席と連接台車という小田急のフラッグシップ特急の伝統を復活させた“白いロマンスカー”50000形「VSE」の開発につながる。
「ロマンスカーじゃない」のか
EXEはロマンスカーとしては6代目の位置づけで、先輩車両には3000形「SE」(1957年)、3100形「NSE」(1963年)、7000形「LSE」(1980年)、10000形「HiSE」(1987年)、20000形「RSE」(1991年)がある(カッコ内はデビュー年)。連接車はSE車、展望車はNSE以降のロマンスカーの伝統で、JRに直通するRSE以外に採用されてきた。
小田急によると、愛称のEXEは「Excellent Express(素敵で優秀な特急列車)」にちなんで名付けられた。ほかのロマンスカーは「Super Express」を略した「SE」を用いているが、EXEはそれらと一線を画した格好だ。
違いはほかにもある。鉄道友の会が前年にデビューした最優秀車両を表彰する「ブルーリボン賞」の第1回は1958年のSE車。小田急ロマンスカーのために創られたような賞だったが、歴代車両のうちEXEだけが選ばれていない。EXEのあと、VSE(2005年)、60000形「MSE」(2008年)、70000形「GSE」(2018年)は漏れずに受賞している。
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