そんなEXEに転機が訪れたのは登場から20年が経過した2017年。外観と内装を大幅にリニューアルして愛称を「EXEα(エクセアルファ)」に変更した。デザインはEXEの後に登場したVSE、MSEと同じく「岡部憲明アーキテクチャーネットワーク」が手がけた。2022年4月時点でEXEのままなのは10両編成7本のうち2本のみとなっている。
EXEαには、最初の1編成を除いて窓側席に電源コンセントを設置した。また、外国人観光客(インバウンド)の需要拡大に対応して荷物収納スペースを確保。トイレは和式を廃止して「ゆったりトイレ」の設置や温水洗浄機能付き便座の採用といった改良を加えた。環境面は省エネ効果が高いという「フルSiC適用VVVF制御装置」を特急車両として初めて採用。主電動機は全密閉式として低騒音化した。
「いい車両なのに、かわいそうだな」
岡部憲明氏はEXEについて「非常にいい車両なのだけど、子供たちにはロマンスカーじゃないと言われ、かわいそうだなと思いながら見ていた」と話す。リニューアルで、駅構内などの暗いところでも明るく映えるシルバーの車体色になり「うまくいった」と振り返る。車内も座席を中心とした改良で一段とビジネスに使える車両になったという。
小田急の社員にもEXE・EXEαの印象を聞いた。ある電車区の指導主任は「ホームウェイを運転しているときは、多くのお客さまを運んでいるという実感がある。後ろでゆっくり休まれているので静かに運転しなくてはと気が張った」と、観光特急の運転とは違った緊張感があると説明する。別の指導主任は「ブレーキを入れたときの衝動がなく素直で運転がしやすい」と一般車に近い感覚だと教えてくれた。運転席が広く、座席のクッションが肉厚なのも運転士には好評のようだ。
また、車掌区の指導主任は「観光のお客さまにはプラスアルファの案内をすることがあるが、ビジネスのお客さまには過剰にならないよう、接客の仕方を共有している」といい、通勤特急ならでは気配りも。新宿の小田急本社に勤務する社員からは「座って帰宅したいときに気軽に乗車できる特急として重宝している」と利用者目線の声があった。
観光だけでなく、通勤などビジネスでの利用にも幅広く活躍ができるEXEは登場からすでに四半世紀が過ぎた。かつて「ロマンスカーじゃない」と泣いた子供も、大人になったいまでは、その多才な“優等生”の乗り心地に満足しているに違いない。
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